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CINEMAバリQ

【ミラクル・ニール】
モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズとサイモン・ペグが笑かす映画

ミラクル・ニール 映画あらすじ

宇宙を支配するエイリアンたちは、地球を滅亡させるか否かを決めるため、1人の地球人に全能の力を与えテストを開始する。まったく知らないうちに地球の運命を委ねられた教師のニールは、自分に全能の力が備わったと知るや否や、次々と無意味なことに力をつかいはじめる。やがて、周囲の人々を巻き込み、事態はとんでもない方向へと発展していく。

ミラクル・ニール 映画レビュー

くだらなくて無意味なギャグの連発で、笑いが間に合わないほどの映画だった。そして、なんといっても、ワシャワシャと微妙に汚い毛が生えた忠実なワンコ、デニスがたまらなく愛おしい。声の主を想うとかなり寂しいが……。

お腹を抱えて大爆笑というよりは、ププッという笑いが込み上げてくる今作品は、イギリスのコメディ集団「モンティ・パイソン」の1人、テリー・ジョーンズがメガホンをとっている。だからこそ、雑でインチキ臭い宇宙人の描き方が、確信犯であるとすぐにわかるのだ。

カウントダウンするとき、宇宙語の数字が、やたらめったら長いので時間がかかるとか、親友をソーセージに変身させたあと、成り行きでソーセージが置いてある店に入るとか、「これは俺のソーセージだ」とか、本当にどうでもいい笑いに包まれ、スッキリしない天候が続き自律神経が乱れそうな季節の変わり目でも、心がバカアホ明るくなった。

とりあえず、しょっぱなニールが無意識につかった力がブラックな方向に及んだり、お行儀のいいウンコ君が走っている姿を見た時点で、「もう、この映画ムリ」という人は少なくないかもしれない。だが、筆者の場合は初めから最後まで猛烈に好みだった。

不自然なほど大きな力だけで、世界を救うことはできない。しょうもないギャグの合間に、そんなメッセージが伝わってきた。すべてがつながり、バランスが保たれたり崩れたりしているのが、この世界なのだ。おかしくて現実離れしていて、ある意味では現実を皮肉たっぷりに描いている、とても面白い作品だ。

そして、犬への愛がこのうえなく感じられた映画でもある。ことあるごとに犬特性の忠誠心や、欲望への正直さ、必要なもの以外には無欲であることを、ギャグを連発しながら描いていた。とにかくビスケットと大好きなご主人さまさえいれば幸せな犬のデニスは、この映画を観た多くのひとに愛されるはず。デニスの声を演じるのは、残念ながらこれが最後の出演作品となったロビン・ウィリアムズである。エンドロールでは、在りし日のロビン・ウィリアムズが、デニスの声のアフレコを行う様子が少しだけ映し出される。

ニールが恋する女性キャサリンを演じるのはケイト・ベッキンセール。犬に悶える演技までさせられていたが、どんな状況でも彼女はとても美しかった。

ちなみに、キャラが濃いエイリアンたちの声を担当したのは、ジョン・クリーズ、テリー・ギリアム、エリック・アイドル、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリンら、モンティ・パイソンのメンバーだ。なぜか審議をする際、その星の言語をつかうルールがあるとか都合のいい設定で、奇妙な姿をしたエイリアンたちは、流ちょうな英語をしゃべっていた。女性の名前をつかいオーストラリアをコケにしたり、欲望と謎の自信がたっぷりで話が通じない、グラント大佐というアメリカ人キャラクターによってアメリカを風刺したりと抜かりない。

モンティ・パイソンのメンバーは皆70代。この作品で放たれる皮肉たっぷりでナンセンスなジョークは、たくさん年齢を重ねた大人たちによるものだ。それに、サイモン・ペグという丸顔の俳優さんが、それらを少しだけソフトにしている。ブリティッシュ・ジョークが苦手だとしても、この映画に限っては試してみるのもいいかもしれない。それに、この夢のような共演は、2度と観れないのだから。

 

ライター中山陽子でした。

 

ミラクル・ニール(2015)

監督 テリー・ジョーンズ
出演者 サイモン・ペグ/ケイト・ベッキンセール/サンジーヴ・バスカー/ロブ・リグル

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