【ヒットマン:エージェント47】
ルパート・フレンドの魅力が後味に残る映画
ヒットマン:エージェント47 映画あらすじ
DNA操作で究極の暗殺者をつくりあげる「エージェント計画」は、リトヴェンコという人物により生み出された。しかし、その人物が姿を消したあと、再び「エージェント計画」を巡って謎の組織が動き出す。そして、彼らが向かう先はすべて、怯えながらある人物を探し続ける女性カティアへと向かっていた。その彼女のもとへ、冷酷な暗殺マシーンが姿を現す。
ヒットマン:エージェント47 映画レビュー
『ヒットマン(2007)』といえば、初めてオルガ・キュリレンコを認識した映画だけに、少しばかり思い入れがある。また、彼女が演じた娼婦“ニカ”の脱ぎっぷりに戸惑いつつも、ニヤケ顔を封印してクールにかわしていく、ティモシー・オリファントのエージェント47も好きだった。
また、エージェント47と深い因縁のあるインタポールの捜査官マイケル・ウィッティアを、チョイ悪おやじダグレイ・スコットが演じているのも良かった。捜査官のくせになんだか悪そうな雰囲気で、それでいて実はしっかり真面目な捜査官で、しかもマイホームパパだぞ。完璧すぎる。
そんな『ヒットマン(2007)』とは語がつながっていないけれど、再びエージェント47が起動すると知って、ずいぶん前から楽しみにしていた。エージェント47は、当初ポール・ウォーカーが演じるはずだったという。本当に残念ながら、もちろんそれは実現が不可能となった。それから全米公開予定が延期され、やっと2015年8月に公開。でも日本では公開なしだ。
しかし、そうして待ち続けているあいだも、気になることがあった。結局、エージェント47を演じるのはアメリカの人気サスペンスドラマ『HOMELAND』で、CIA職員のピーター・クインを演じているルパート・フレンドになったのだが、『HOMELAND』を観ていなかったので思い入れが薄く、おまけに、どうも頭のてっぺんが尖っているのだ。
……まあ、頭の尖がりは別にいいのだが、
……いや、やっぱり気になるのだが、
それ以前にティモシー・オリファントとはあまりにも違いすぎて、鑑賞するまで違和感を拭い去ることができなかったのである。
が、しかし
ルパート・フレンドは、驚くほど魅力的だった。
最初のうちはターミネーターのように、真顔のままハンナ・ウェアが演じるカティアを追い続けていた。アメリカ大使館でも不敵な態度をとり、常に冷静で、冷淡で、残酷だ。そんな様子が、エージェント47への恐怖感をぐいぐい高めていく。
しかし、穏やかで囁くような色っぽい声でありながら、重みのある口調で言葉を発したとき、ビリビリと痺れるものを感じた。また、少ない抑揚ながら感情を覗かせたとき、意外にガッシリとした体で超絶アクションを見せたとき、痺れがドカーンときてしまったのだ。
ときおり「どうしたんだ」と言いたくなるようなブリッジをしながら起きあがったり、その体勢のまま二丁拳銃をブチかますのだが、金メダリスト荒川静香さんも二度見するほど美しいイナバウアーなのだ、いや、ブリッジポーズなのだ。
また、銃を撃ちながらのスタンダードなポーズも、スタイリッシュな映像美も抜かりない。本当に失礼ながら、まったく期待していなかっただけに、心からルパート・フレンドの魅力にハートを撃ち抜かれた。
ただし、その感激は、映画そのものからは“ほぼ”もらえなかった。インド映画ぐらい豪快に突っ込めたらまだ楽しいのだが、微妙に中途半端な突っ込みどころばかりなのだ。たとえば、
「彼は、君以外には絶対に見つけることができない」
といいながら、完璧なプロファイルができるほど情報をもっていた。少しぐらい推理しろ。
「あの男はぜったいに出てこない」
といいながら、意味不明にあっさり出てくる。しかも、出てきた途端に大物感もあっさり消える。
「あの男を消すことは不可能だ。暗殺に向かったエージェントが何人も死んだ」
といいながら、あっけなく攻撃できる。
「あいつらが君の正体を知れば、追い続けるだろう」
それは、すでに敵の部下が博士のファイルで確認していたと思うのだが……。
なお、今作品で、アメリカのSFドラマ『HEROES』のサイラー役や、現代版スポック船長でお馴染みのザカリー・クイントは、謎の男ジョン・スミスを演じている。とても個性的な俳優さんなので、敵か味方かわからない状態で登場させた感じはとても良かった。しかし、後半があまりにも冴えない。かなり、もったいないと感じた。
濡れたブルーグリーンの目が印象的な、美しいイギリスの女優さんハンナ・ウェアにおいても同じである。とても重要な役柄なのに、覚醒するシーンが、あまりにもあっけない。へ?と思っていたら時間が過ぎ、映画が終わってしまった。また、アクションを披露するならば、もう少し鍛えたほうがいいかもしれない。もしかして癖かもしれないが、ペタペタと歩く姿は筋肉がまったく発達していないと感じさせた。また、腕も細すぎるので、とりあえず松岡修造さんに鍛えてもらい、ほどよい上腕二頭筋をつくりあげて欲しい。
とにもかくにも、観終わったあとはルパート・フレンドのブリッジ姿と、その魅力だけが後味に残る、映画だったのである。
ライター中山陽子でした。
ヒットマン:エージェント47(2015)
監督 アレクサンダー・バック
出演者 ルパート・フレンド/ハンナ・ウェア/ザカリー・クイント/キアラン・ハインズ