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CINEMAバリQ

【ルーム】
ブリー・ラーソンの役者魂と親子愛を感じる映画

ルーム 映画あらすじ

ジャックは大好きなママと「部屋(ルーム)」で暮らしていた。いつも一緒にテレビを観たり、体操をしたり、お風呂でふざけあったりする。誕生日には一緒にケーキ一も焼く。でも、ジャックは日曜日に差し入れを持ってくるオールド・ニックのことは、よく知らない。本当に存在しているのかさえわからない。そして5歳になったジャックに、ママはとうとう真実を告げる。「ジャック、『部屋』の外には、あなたの知らない本当の世界があるのよ」ジャックは混乱したけれど、ママはその世界に、ジャックを送り出そうと決意する。

ルーム 映画レビュー

なんという物語だろう。だが、残念ながら現実に起こり得ることだ。
しかし、映画そのものは理不尽な状況や嘆きを強調するわけではなく、
いろいろなかたちで生じた事実をやわらかく包み込み、
きわめて自然に淡々と映し出している。

髪の毛が伸び放題で一見女の子に見えるジャックは、5歳の誕生日を迎えたとき「ケーキにロウソクがない」と不満をもらす。そして、はじめての掟破りもしてしまう。自我や好奇心とともに育っていく息子の姿を目の当たりにしたママは、健康面も含めて限界を感じ、決意を固めていく。

 

原作は、脚本を書いたエマ・ドナヒューのベストセラー小説『部屋(2010)』である。オーストリアで実際に起きた「フリッツル事件」が執筆に影響したとのこと。その事件の忌々しさは、文字で書くのも不快なほどだ。

しかし、その事件とは似て非なるもので、おぞましい部分はリアルに描かず、子供目線で優しく表現している。ママがジャックを“本当の世界”に送るため、5歳の子供には難しい段取りを伝える際、『モンテ・クリスト伯』など、子供にもなじみのある物語を応用したことが印象的だった。

ママがオールド・ニックに向かって「この子に触らないで!」と絶叫するシーンがある。心と体、そして肌もボロボロの母と、眩いほど純潔で無垢な息子。その対比が大きければ大きいほど、いかに母が愛するわが子を守り抜いてきたかがわかる。ママを演じたのは、女優でありシンガーソングライターのブリー・ラーソン。映画のなかで聴き心地よい歌声を披露していた。そして、ジャックを演じたのはジェイコブ・トレンブレイ君。男の子だが、妖精のように可愛らしくて美しい。

ブリー・ラーソンが演じるママは、とんでもない事件の被害者だ。それに、親子にふりかかる苦難を、まず一身に受けるのは幼い子供ではなく母親である。そんな、状況下で、すっかり社交性が欠如してしまったママを演じたブリー・ラーソンの演技は、とても真に迫っていた。そして、そんな彼女の演技が、ジャックの透明感や、”ばあば”とレオの寛容さをより際立たせた。

 

孫から聞く「部屋」でのことに心を痛めながら、愛情という安定剤で平常心を保ち、「ばあば大好き」という孫の言葉にハッとする。複雑な状況のなかで、ジャックの素直な心と、優しさと愛情に満ちた祖母が心を通わせたとき、思わず涙がにじんだ。

隔離された世界で生きていた親子が、決死の覚悟で踏み出した外の世界もまた、過酷な場所だった。でもそこには、ひとの体温を肌で感じるようなフンワリとした温かさもある。この静かで衝撃的な映画を観終わったあとは、親子の姿が脳裏から離れなくなるだろう。

 

ライター中山陽子でした。

 

ルーム(2015)

監督 レニー・アブラハムソン
出演者 ブリー・ラーソン/ジェイコブ・トレンブレイ/ジョーン・アレン/ショーン・ブリジャース

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