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CINEMAバリQ

【エスコバル 楽園の掟】
ベニチオ・デル・トロが実在した麻薬王パブロ・エスコバルを演じる映画

エスコバル 楽園の掟 映画あらすじ

兄ディランと兄想いの弟ニックは、小さな自分たちの楽園をコロンビアに築いた。その場所に根を下ろすのは、ケガをしてサーフィンができなくなった兄ディランの夢だったのだ。ところが、やっと楽園での生活を満喫しはじめると、シャバ代を払えと近所のゴロツキが脅しにやって来る。だが真の恐怖のはじまりは、ニックがコロンビア人で麻薬王の姪である、マリアを愛してしまったことだった。

 

エスコバル 楽園の掟 映画レビュー

映画を観終わり、いや~な気分が雨雲のように心を覆ったが、この映画の主役パブロ・エスコバルは実在した麻薬王だ。家族に愛をそそぎ貧困層を救いながら、陰では麻薬で巨万の富を築き、おびただしい数の反対分子を惨たらしく殺しまくっていた。そもそも爽快なラストなんてあり得ないのだ。神さえも従わせようとした男は、南米のゴッドファーザーとも呼ばれていたとか。

なんにしても、コロンビアなんて日本人の自分からすると聞いただけでも恐ろしいのに、そこを楽園だと考え住みはじめるなんて、あまりにもニックとディラン兄弟は浅はかだ。なおさら兄のディランには、妻と幼い子供もいるのに。ゴロツキが現れた時点で察知すればよかったのだ。この場所は“普通じゃない”と。

そんな後悔を、念押しするようなワンシーンがラストに映しだされる。仲のよい兄弟は、ただそこに、ささやかな幸せを求めただけだった。

マリアを愛し、兄一家まで巻き込んでしまったニックは取り返しのつかない間違いを犯したが、そもそも兄のためにコロンビアを訪れていたので、同情しないでもない。それに、ニックが愛してしまったマリアは、純粋で素朴で、健康的な色気があり、とても可愛らしい。誰だって不可抗力で惚れてまう。そして、ニックは何も知らされないまま、麻薬王のファミリーに深く入り込んでしまったのだから。

だが、マリアが叔父であるパブロ・エスコバルの資金源を、悪びれずコカインと言い放ったとき、もっと冷静になっていれば、あんな状況まで追いつめられることはなかったはずだ。

パブロ・エスコバル本人が遺体となった、本物の写真は簡単にネットで検索できる。自身がつくった複合施設で、現在はテーマパークとして生まれ変わったアシェンダ・ナポレス(HACIENDA NAPOLES)にも堂々飾られている。彼を葬った側である特殊部隊の人間が、その遺体を前にして満面の笑みを浮かべている写真だ。

エスコバルは家族や味方、貧困層にはあふれるほどの恩恵を与えたが、自分にとって障害となる人物に対しては目を覆うほど残虐だった。そのため、熱狂的な崇拝者と、彼を心底憎む人々、両極端な人間が存在したようだ。しかし、彼の無残な姿が公開され続けているということは、それほどパブロ・エスコバルを憎む人、もしくは敵が多かったということかもしれない。見せしめの意味合いもあると思うけれど。

パブロ・エスコバルを演じたのは、増量して役づくりをしたベニチオ・デル・トロ。謎のファッションを数々披露しているが、それもパブロ・エスコバルの特徴だったのだろう。彼の演技は文句なしの迫力で、本当にそういう人物ではないかと思えるほどだった。

ベニチオ・デル・トロが演じたパブロ・エスコバルは、決して下手に恫喝したりはしない。パブロの汚い仕事、いわゆる殺しを担う上層の部下も同じ。ただ、静かに、まるで家でくつろいでいるのかのように、残虐非道なことを平気で行う。だから底恐ろしい。

目を見張るカリスマ性と、息苦しくなるほどの威圧感、巨万の富と権力と人気があり、自分を脅かすと思えば身近なものにも容赦しないパブロだが、終盤は行き詰まりや、焦りのようなものを感じた。それは、この映画の時代背景がコロンビア政府と合意のもと、実際にパブロ・エスコバルが服役することとなった1991年あたりだから。この映画では描かれていないが、それから数年後、彼は一斉射撃を受けて命を落とすことになる。

ただ、この麻薬王が死んだあとは別の麻薬組織が台頭したので、結局コロンビアの情勢は変わらなかったらしい。

物語は脚色されたものかもしれないが、世界で7番目の大富豪としてフォーブス誌に取り上げられた、南米のゴッドファーザーの人物像や犯した罪は、かなり事実にもとづいているはず。ベニチオ・デル・トロの怪演含め、一見の価値はあると思う。

ライター中山陽子でした。

 

エスコバル 楽園の掟(2014)

監督 アンドレア・ディ・ステファノ
出演者 ベニチオ・デル・トロ/ジョシュ・ハッチャーソン/クラウディア・トライサック/ブラディ・コーベット

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