【フェイシズ】
失顔症という病気を考察するうえで興味深い映画
フェイシズ 映画あらすじ
アンナは、恋人との結婚を控えた小学校教師。ある晩、友人たちと酒を飲んだあと、帰宅途中に連続殺人鬼の犯行現場を目撃してしまう。犯人に襲われたものの奇跡的に命を取り止めた彼女だったが、脳に損傷を受け障害が起こる。その障害とは、人の顔を見ても識別できない失顔症(相貌失認)だった。それは、つまり、目撃者となった自分の命を狙う、連続殺人鬼の顔も認識できないということ。順風満帆だったはずのアンナは、常に恐怖にさらされているうえに、誰の顔も認識できなくなり、精神的に不安定になっていく。
フェイシズ 映画レビュー
失顔症というのは俗称らしい。正式には、相貌失認(そうぼうしつにん)という名前なのだそう。この病気は、あのブラッド・ピットが「自分が失顔症ではないか」と告白したので、多くの人に知れ渡ったのではないだろうか。
脳には顔領域(側頭葉・後頭葉にある)と呼ばれるものがあり、それが人間の顔を認識するそうだ。つまり、この映画の主人公は殺人鬼に襲われた際、この部分に損傷を負ったということ。
普通であれば、人は相手の顔を見たとき無意識に、目・鼻・口の特徴を、瞬時にデータベース化するらしい。いや~脳ってすごい。これを行うのが脳の顔領域だ。
しかし、失顔症の人の場合はそれができないので、顔の周辺の髪型・輪郭・におい・しぐさ・体格ほか性格などを頼りに、その人物を識別するのだとか。
この映画のなかで、失顔症になった主人公が、なぜか唯一顔を認識できる人物がいた。その人物とは刑事のケレストだ。はじめはやたら横柄で感じが悪かったが、後半は武骨でシャイな一面が見え好感度が上昇。その彼は、スーパーマリオばりの豊かなヒゲをたくわえていた。いくらなんでも、その濃すぎるヒゲはどうしたものかと思ったが、失顔症の人が識別しやすい顔周辺の特徴を表現していたのだろう。
終盤、ちょっとウキウキしちゃった刑事ケレストが、うっかりヒゲを剃っちゃう展開がある。ケレストは「やっちまった~」と後悔したが時すでに遅し。せっかくケレストだけはアンナが識別できていたのに、それさえもできなくなってしまった。なんちゅうことをしてくれたんだと思いきや、ラストの盛り上がりで、しかも一番大事なところで、ヒゲが浮かび上がる。
正直なところ、悲しい展開なのにケレストを識別できた状況があまりにもギャグ過ぎて、物語が頭に入ってこなくなってしまった。失顔症を探っていくと、そんな状況もあり得るなと思うが、ヒゲを浮かび上がらせたのが違う人ならば、その人がケレストになっちゃったのではないかという心配も浮上し、やはり結局、物語が頭に入ってこなくなってしまった。
しかし、なぜ髪型やヒゲは識別できるのに、目・鼻・口という顔の部分だけが識別できなくなってしまうのか不思議だが、実は“顔識別”自体、人間が進化したがゆえにもてた能力なのだそう。顔を瞬時に識別するということは、相手が知っている人間か知らない人間か判断すること。つまり、敵か味方を判断して身を守るためなのである。
ちなみに、アンナを演じたのはミラ・ジョヴォヴィッチ。『バイオハザードシリーズ』のアリスなら、連続殺人鬼もフルボッコにできるので、「サッサとぶちかませ!」という気持ちがムクムクと湧き上がり、イライラしてしまったのは否めない。
ライター中山陽子でした。
ジュリアン・マニャ(2011)
監督 ジュリアン・マニャ
出演者 ミラ・ジョヴォヴィッチ/ジュリアン・マクマホン/サラ・ウェイン・キャリーズ/マイケル・シャンクス
ジュリアン・マニャ監督作品の買取金額の相場はこちら
ミラ・ジョヴォヴィッチ出演作品の買取金額の相場はこちら
ジュリアン・マクマホン出演作品の買取金額の相場はこちら