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CINEMAバリQ

【エレメンタリー ホームズ&ワトソンin NY】
天才で変人のホームズと知的な常識人ワトソンの犯罪捜査ドラマ其の五

チームの一員になった気分を味わえる、1話完結型の犯罪捜査ドラマをご紹介する第五弾です。今回ピックアップしたのは、かの有名な作家アーサー・コナン・ドイルが生んだ推理小説『シャーロック・ホームズ』のキャラクターが、ニューヨークで大活躍するドラマ『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』。ワトソンが女性ということで話題になったドラマですが、最初はなかなかうまく噛み合わなかった歯車が、次第に不器用な友情により噛み合っていくという面白さがあります。

エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NYの魅力

『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』は、2012年からアメリカCBSで放送が始まりました。現在本土ではシーズン5まで放送されているようです。日本ではシーズン3まで観ることが可能です。

このドラマの見どころは1話ごとに完結する事件解決の小気味よさと、なんといっても探偵ホームズの非凡さでしょう。「常識」という言葉は彼の辞書にはありません。事件を解決するためならば、あえて人が選択しないような捜査方法を選び、ルール違反もためらわずガンガン犯します。こうと思ったらすぐ行動してしまうので、人の都合なんてもんは一切気にしません。しかし、彼が持つ規格外れの知性と観察力や洞察力、そして事件解決に向けた実行力は誰もが認めざるを得ないため、ある程度は許容されてしまうのです。

事件解決のためには人の怒りを買ってもどこ吹く風なホームズですが、彼には大切な人間が3人います。それは、相棒のワトソンと、グレッグソン警部、その部下のベル刑事です。実は筆者がこのドラマに夢中になったのは、鬼才ホームズと3人の関係性が、たまらなく心地よいからなのです。

天才だけど大人としてはまるでダメな“お子ちゃま”ホームズを、これがまた冷静で温厚で、しかも超がつくほど常識人で真面目なワトソンと、グレッグソン警部、ベル刑事が、うまくサポートしながら見守っているという、まるで子供と保護者のような関係がなんだか微笑ましいわけです。しかし、ドラマがスタートした当初は、グレッグソン警部以外の2人との関係は、あまりいいものとは言えませんでした。そんな彼らが徐々に認め合っていく様子も、このドラマの見どころです。

また、小説ではワトソンが男性ですが、このドラマでは女性という部分が大きな特徴です。最初は「ちょっと路線を変えてみたんだな」ぐらいにしか思えませんでしたが、今となっては、この意外な配役がドラマをより面白いものにしていると感じるようになりました。そして、俳優さんたちが、それぞれの役柄にドンピシャリとハマっていることが、このドラマの最大の魅力でしょう。

魅力的なキャラクターたち

◆シャーロック・ホームズ

シャーロック・ホームズ(ジョニー・リー・ミラー)がロンドンからアメリカにやってきたのは、薬物依存症の施設に入るためでした。薬物依存というのは意外でしたが、実際に小説内でもホームズの薬物依存が描かれているようですね。ロンドンではスコットランドヤード(ロンドン警視庁)の捜査を無償で手伝っていた経緯があり、施設を出たあとは、その頃の仲間だったグレッグソン警部がいるニューヨーク市警の捜査を手伝うことになりました。そこで、先述した通り型破りな捜査協力をするわけですが、最初は独特なホームズのすべてに違和感がありました。やることなすこと突飛だし、娼婦と遊びまくるし。しかし、この役を演じたジョニー・リー・ミラーの演技センスがよかったせいか、今では子供みたいで才能にあふれる、本当はやさしくて情に厚いホームズが、かわいくて仕方ありません。大好きな人には、ちょっぴり弱い部分もまたかわいいのです。基本的に捜査協力は無償のようですが、かなりの財力を持つ父親がいるので、生活には困らないみたいです。

◆ジョーン・ワトソン

ジョーン・ワトソン(ルーシー・リュー)は、やはり原作同様に医師という肩書がありました。しかし、ドラマが始まった当初からワトソンはもう医師ではなく、元麻薬依存者の回復をサポートするという「付添人」としてホームズの前に現れています。日本で付添人というと、裁判所に協力している人といった感じですが、海外ではアルコールやギャンブル依存症などの場合にも付添人が存在するようです。そんなワトソンを演じるのは中国系アメリカ人女優のルーシー・リュー。知的で清潔感がある、とても魅力的な女性です。彼女が演じるワトソンは、もはや悟りを開いた仏陀ではないのかと思うほど、ホームズに対して寛容です。もちろんイラッとして反論することもありますが、多くの場合は自分の中で咀嚼して、常識的な大人の態度で対応します。この心の広さには、いつも感服してしまいます。なお、このドラマでは、彼女のキュートなファッションも要チェックなのです。

◆トーマス・グレッグソン警部

トーマス・グレッグソン警部(エイダン・クイン)は、ホームズが心から尊敬し信頼する人物です。もちろん時間を経て、ワトソンやベル刑事にもホームズは深い信頼を寄せていますが、昔から知り合いであるグレッグソン警部との関係性は、また少し違うのです。年の離れた兄貴のような、頼りになる先輩のような……、といった感じでしょうか。グレッグソン警部にとってもホームズは、困った奴だが憎めない弟、もしくは甥っ子といった感じでしょうか。シーズン1の中で、グレッグソン警部がホームズに対し本気で怒りをあらわにするエピソードがあります。その時も怒ってはいるのですが、なんだか兄貴のような深い情を感じました。このグレッグソン警部を演じるのは、ブルーの瞳が魅力的なエイダン・クイン。今もセクシーで素敵なオジサマですが、『マドンナのスーザンを探して(1985)』の頃は、ちょっと優しげなジェームス・ディーンみたいだったんですよ。

◆マーカス・ベル刑事

マーカス・ベル刑事(ジョン・マイケル・ヒル)は、エピソードを追うごとにどんどん好感度が増してくる人物です。最初はホームズに対して懐疑的なところがあり、協力的ではありませんでした。しかし、ホームズの才能を認めるようになってからは、ちょっぴりルールを破るぐらいの捜査には協力するようになります。ホームズも、グレッグソン警部には言いにくいなあというようなことを、まずはベル刑事に相談することがあります。ホームズは子供っぽいぶん、人の本質を見抜く才能があるようです。そのため、彼には初めから、ベル刑事が信頼できる人物だとわかっていたのでしょう。グレッグソン警部からの信頼が厚いことも、物語を通じて伝わってきます。ちなみに、ベル刑事には元ギャングで前科者の兄がいますが、弟である彼は、心底まじめな人間です。

このように、魅力的なキャラクターたちが大活躍する『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』は、まだまだ躍進中。これから、ホームズとワトソンの関係性がどうなっていくのかも楽しみです。そして実は、このドラマにも人気ドラマ『メンタリスト』同様、シーズンを通した主人公の宿敵がいます。その展開も見逃せません!

ライター中山陽子でした。

 

出演者 ジョニー・リー・ミラー/ルーシー・リュー/エイダン・クイン/ジョン・マイケル・ヒル

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