【ブラック・ファイル 野心の代償】
豪華キャストだし雰囲気もいいけど集中しにくい映画
ブラック・ファイル 野心の代償 映画あらすじ
不正行為で多額の利益を得ている巨大製薬会社ピアソンは、薬害被害者から訴えられても、メディアから激しく追及されても、決定的な証拠がないためビクともしない。そんななか、ピアソン製薬のCEOアーサー・デニングと恋人関係にあるエミリーが、元恋人で野心家の弁護士ベン・ケイヒルにその決定的な証拠を渡す。ベンは、この薬害問題を勝訴に持ち込めば劇的に出世できると確信し、上司のチャールズ・エイブラムスにピアソン製薬への訴訟を起こすよう持ちかける。エイブラムスは、デニングとの戦いがいかに想像を絶するかをベンに伝えたうえで、それを承認。しかし、その野心と熱意とわずかな過ちがベンの足元をすくい、彼を思わぬ方向へと追いやっていく。
ブラック・ファイル 野心の代償 映画レビュー
ほとんどゲスな連中しか出てこない映画だった。そして、登場人物や物語がとっ散らかっていた印象だ。アンソニー・ホプキンスとアル・パチーノという大物が出演しているだけに、非常に残念である。おまけにこの名優たちは本作が初共演とのことではないか。うーん、なおさらもったいない!
しかしながら雰囲気はとても良かった。下手な説明がないし、モダンとクラシックが入り混じったような映像で、間のとり方やカメラのアングルが印象的だ。たとえば言葉を発している人間ではなく、その言葉を聞いている人間だけがカメラでとらえられている。また、何か起こっているようでも、何が起こっているかはすぐに見せてくれない。決定的なシーンも、建物の外から映してハッキリとは見せない。
こんな風に観ている側の想像力をかきたてる手法は、まるで昔ながらのサスペンスのようだ。するとなるほど、この作品を監督した日系アメリカ人のシンタロウ・シモサワ氏が、もっとも影響を受けた監督はヒッチコックだとのこと。
だが雰囲気は魅力的でも、腑に落ちない部分がサラリと流せないほどたくさんある。たとえば、絶大な権力を持つ人間が、ある部分でずいぶん手薄なところなどだ。また、謎の人物が起こす行動が「謎」ではなく単に「?」で、ベンとの騒々しいバイクのシーンも何がしたかったのか意味不明。
主人公の追い詰められ方もずいぶん中途半端だったし、終盤の盛り上がりもあっけない。また、驚愕のラストといわれる部分については、発想や演技、雰囲気はいいものの、そこにいきつくまで物語に引き込まれたわけでもないので、結局は不完全燃焼で終わってしまう。
そういえば、この映画のラストシーンと展開が似ている映画がある。その映画はずいぶん前のものなので、比べたら目新しさの部分で今作品が不利なのは当然だ。しかし、そのハンデを考慮しても、古い映画の方が衝撃的だったように思う。なぜならば、地味にじわじわと物語に引き込まれ、最終的に立ち直れないほどの衝撃を与えられたからだ。
つまり、気を散らす複雑さがない映画だったからこそラストシーンが生きたのだ。今作品の場合は、謎めいた雰囲気をつくろうと色々詰め込み過ぎて無理が生じたのかもしれない。それともうひとつ、毒がないイケメンのジョシュ・デュアメルは、ゲス野郎のベン・ケイヒル役があまり似合わなかったように思う。
ちなみに、やはりアンソニー・ホプキンスの強烈な存在感は、今作品においてもまったくブレがない。相変わらず、ちょっぴりハンニバル・レクター博士に見えなくもないけど。
ライター中山陽子でした。
ブラック・ファイル 野心の代償(2015)
監督 シンタロウ・シモサワ
出演者 ジョシュ・デュアメル/アンソニー・ホプキンス/アル・パチーノ/イ・ビョンホン
シンタロウ・シモサワ監督作品の買取金額の相場はこちら
ジョシュ・デュアメル出演作品の買取金額の相場はこちら
アンソニー・ホプキンス出演作品の買取金額の相場はこちら