【裸足の季節】
みずみずしく美しい5人姉妹が魅せて伝える映画
裸足の季節 映画あらすじ
10年前に両親を亡くした5人姉妹は、祖母や叔父とトルコの小さな村で暮らしていた。美しく成長した姉妹は、村の古い慣習と厳格なしつけに息苦しさを感じ抵抗を繰り返す。しかし、抵抗する度に厳しさが増し、ついには自由を奪われ家のなかに閉じ込められてしまう。それだけではなく、結婚相手を強制的に決められていくのだ。そんな状況のなか、末っ子のラーレは密かにある計画を思いつく。
裸足の季節 映画レビュー
『ヴァージン・スーサイズ(1999)』のような感じかなあと少し斜めに構えて鑑賞していたら、表面は似ているが根本的には大きく違っていた。それに、みずみずしく力強い生命力にも出会うことができた。5人姉妹の未熟で危うい美しさに魅了され、まっすぐ前を見据えたラーレの澄んだ瞳に勇気を与えられる。
この映画の舞台は、トルコのイスタンブールから1000km離れた黒海沿岸の小さな村だ。そして、末っ子ラーレの大好きな先生はそのイスタンブールにいる。姉たちの過酷な状況を目の当たりにし、暗い先行きしか想像できないラーレにとって、イスタンブールはまるで“三蔵法師にとっての天竺”、いわゆる理想郷だ。深い湖のように濡れた瞳には、いつも遠くにあるイスタンブールが煌めきながら映っている。
アジアとヨーロッパの中央に位置するトルコは、世界遺産の宝庫といわれ海外旅行先としても人気が高い。都心部ではテロが頻発しているため安全とは言い難いが、そのエキゾチックな雰囲気は多くの人を魅了してやまない。
しかし、今作品に出合い観光目線ではないトルコに興味がわいた。すると、この国が抱える大きな問題が見えてきたのだ。実をいうと、物語の途中にはすこし少女たちがワガママに見えてきて、祖母が気の毒にも見えていた。それゆえに、のちの展開は観客が迷うことなく少女たちに味方するよう組み込まれたものなのかとも思った。だが実状を知ることで、これはトルコにはびこる問題のごく一部を描いているのだと解釈できた。トルコは早くから女性に参政権を与えていたのに、なぜか時代に逆行して保守化が進んでいるという。そして、その保守化の被害者は女性たちなのだ。
事実、この作品は、トルコのアンカラで生まれたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督の祖国に対する複雑な思いや、監督自身が少女時代に体験した出来事、身近な人々の経験などが投影されているという。末っ子ラーレの目線は、幼いころの監督の目線だったのかもしれない。まるでラーレという少女が存在した人物で、彼女が目に焼きつけた景色をつなぎ合わせたようにも感じたのだ。
特にそれを強く感じたのは、叔父のエロルと男たちがテーブルを囲んで酒を飲んだり食事をしたりしているところ。または娘たちが料理などを教わるシーン。そして、姉たちの結婚相手とその家族が訪ねてきたときのシーンなど。
なお、この映画は物語にこめられたメッセージと、少女たちのみずみずしい美しさが見どころだが、実はそれ以外にも注目したいものがある。それは、料理やお菓子をつくるシーンだ。中華料理やフランス料理と並び世界三大料理でもあるトルコ料理は、日本人の口によく合うという。映画のなかでは、家庭でトルコ風ラビオリのマントウや、ガムを作っているシーンがあってなかなか面白い。
ちなみに、日本の繁華街などではドネルケバブ(回転させながら焼いた肉をパンに挟んで食べる)をよく見かけるが、本場のケバブはドネルケバブのほかに、パンを下に敷いて上に肉や野菜をのせた絶品ケバブがあるとのこと。
写真を見るとすこぶる旨そうなのだが、残念ながら現時点では浮かれた気持ちでトルコ旅行に出かける気には到底ならない。
ライター中山陽子でした。
裸足の季節(2015)
監督 デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演者 ギュネシ・シェンソイ/ドア・ドゥウシル/トゥーバ・スングルオウル/エリット・イシジャン
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