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CINEMAバリQ

【MUD】
“男が女を愛する時”が聴こえてきそうな映画

MUD 映画あらすじ

ボートハウスで両親と暮らすエリスは、親友のネックボーンと小さな島へ探検に出かけた。目的は、ネックボーンが発見した木の上に乗ったボート。だが、そこで2人の前にマッドという怪しげな男が現れ、「ボートの所有権は自分にある」と主張。ただし、食料を持ってくれば、自分が去り次第ボートは渡すという。ネックボーンはその男を訝しく思うが、エリスは男のために食料を集めだす。

 

MUD 映画レビュー

アメリカの田舎町、決して恵まれない環境でたくましく生きる少年たち。探検の先にある、何やら危険な臭い。そして、リヴァー・フェニックスを思い起こさせるネックボーン(ジェイコブズ・ロフランド)を見たとき、ああ、これは『スタンド・バイ・ミー(1986)』なのだと察した。

だが、この映画で描かれているのは、少年たちの心に深く刻まれた“奇異な体験”だけではない。「女」を愛した少年、中年、熟年の男たちの物語である。

ふと『男が女を愛する時(パーシー・スレッジ)』の歌詞が頭に浮かぶ……。

主演は、徹底した役づくりと安定した演技で、映画をよりリアルに見せてくれるマシュー・マコノヒー。マッドという少し複雑な役柄を、あたかもその人物であるかのように演じていた。

タイトル「MUD (マッド)」は主人公の名前とも、「泥・ぬかるみ」とも捉えられる。もちろん後者は、登場人物らが陥った状況を揶揄したものだ。

マッドは最愛にして厄介な女に振り回され、周囲まで巻き込んでしまうような男。彼と年齢を超え友情を育むのは、両親の離婚に心を痛めている少年エリス。年上の女の子に恋してる。親がいないため叔父と暮らすネックボーンに、復讐に燃えるファミリー。ボートハウスで孤独に暮らす初老の男。幾度となく男に振り回され傷つきながら、誰よりも自分を愛する男を翻弄し続ける女。

そんな彼らが織りなす物語は、限りなく地味で閉塞的だ。それなのに、不思議と全てがドラマティックに感じられる。

よくある食材で作られた、可もなく不可もない在り来たりな料理かと思いきや、食べてみたら驚くほど味わい深かった……、という感じ。

それはきっと、ジェフ・ニコルズの思慮深く情緒にあふれた作風のせいだろう。

また、配役もいい。マシュー・マコノヒーは先述したとおりだが、少年エリスを演じたタイ・シェリダンもなかなかの演技。マッドを責めて慟哭するシーンには引き込まれた。

そして……、

トム・ブランケンシップを演じたサム・シェパード。

彼がこの作品で演じた、多くを語らない頑固で優しい男は、いかにも彼らしい役柄に思えた。息子のように思っている男の頭を、“ポンポン”とするシーンには思わずジンとした。

そのサム・シェパードは先日、難病と戦った末に、とうとう天に召されてしまった。本当に、本当に、残念だ。心よりご冥福を申し上げます。

ライター中山陽子でした。

 

MUD(2012)

監督 ジェフ・ニコルズ
出演者 マシュー・マコノヒー/タイ・シェリダン/サム・シェパード/リース・ウィザースプーン

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