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CINEMAバリQ

【バグダッド・カフェ】
砂漠に咲いたおばちゃんたちの友情物語

バグダッド・カフェ 映画あらすじ

ドイツのローゼンハイムからやってきたジャスミンは、旅行で訪れたアメリカを移動中、夫と大ケンカになる。勢い余って車を降りた彼女は、1人重いトランクを引きずり砂漠を歩くはめに。その彼女がやっとたどり着いたのは、バグダッド・カフェというさびれた店だった。そこには風変わりな客や従業員、そして、怒れるオーナー夫人ブレンダがいた。

 

バグダッド・カフェ 映画レビュー

ジェヴェッタ・スティールが歌う「コーリング・ユー」が耳に残る、おばちゃんたちの友情物語。アメリカ南西部の、カリフォルニア州、ユタ州、ネバダ州、アリゾナ州にまたがるモハーヴェ砂漠のどこかにポツンとある、うらぶれたガソリンスタンド兼モーテル兼カフェに、ドイツ人旅行者ジャスミン(ヤスミン)がやってくる。

「センターってどこかしら?」
「あ? センターはここよ」

そこのオーナー夫人ブレンダが不機嫌に答える。ジャスミンはてっきり、センターは色んな施設が建ち並ぶ場所だろうと想像していたのだ。確かに、ガソリンスタンドとモーテルとカフェはあるけどね。

なんせ、ブレンダはその少し前、人はいいが、まともに働いてくれない夫と大ゲンカをしたばかり。しかも、ブレンダが激しく責めるもんだから、夫はとうとう家を出て行ってしまったのだ。子供たちは全く言うことを聞いてくれないし、カフェなのにコーヒーマシンが壊れていてコーヒーも出せない。(ほとんどお客さんは来ないけど)

行き場のない気持ちをかかえたブレンダが、人知れず涙を流していたところに現れたのが、独特な雰囲気を持つふっくら系ドイツ人、ジャスミンだったのだ。つまり、出会いは最悪ということ。

そこからブレンダの、ジャスミンに対する疑念や嫌悪感が増幅していく。だいたい、自分のところのモーテルに泊まりに来る客なんぞ、ほとんど居やしない。バックパッカーの青年がやってきたかと思えば、「ここにテントを貼っていい?」だし。だが、ドイツからやってきたジャスミンは、どうやら長期滞在するようなのだ。おまけに、彼女の部屋にはなぜか男性ものの服ばかり。それには事情があるけれど、そんなことを知る由もないブレンダには「怪しい女」にしか映らない。

でも、だからといって、ブレンダの猛攻撃は目に余る。夫との大ゲンカだって、あまりにも考慮なく感情をぶつけ過ぎではないか。でもきっと、こう言えばああ言うのブレンダは「その“考慮”とやらは、コーヒーマシンを直してくれるのかい?」と、画面に向かって観客に怒鳴り散らしそう(笑)。そんな暴れ馬のブレンダでも、やさしい夫は遠くから「ああブレンダ、ブレンダ」と見守っている。出て行ってはみたものの、家族の様子が気になるのだ。(というか、帰りたいけど怖くて帰れないだけかも)

しかし、そのブレンダの暴れっぷりは、終盤の従順さを引き立て、友情物語を大いに盛り上げてくれる。

あまりやる気のない従業員も、遊ぶことばかり考えている小娘も、子供そっちのけでピアノの演奏ばかりしている少年も、ちょっと風変わりな芸術家も、マイペースなバックパッカーも、本当はたくさん傷ついているブレンダも、知らず知らずのうちジャスミンから多くの影響を受けていく。のちに披露されるマジックさながら、彼女はまるで魔術でもつかったかのように、そこに集う人々の心に入り込んでしまったのだ。色気ムシで彫り師のデビー以外はね。

30年近く前に鑑賞したときも、「おばちゃん、よう脱ぐな」と思ったが、観なおしたらやはりジャスミン役のマリアンネ・ゼーゲブレヒトはよく脱いでいた。その年齢に左右されない脱ぎっぷりはシャーロット・ランプリングに匹敵する。

ところで、ジャスミンはブレンダに支払いのことを聞かれて五右衛門風呂を思い浮かべていたけど、あのトラベラーズチェックは大丈夫なのだろうか。まあ、そんなことは気にしなくていいぐらい、ジャスミンはたくさんの恩恵をブレンダに与えたけれど……。そして、ブレンダもジャスミンにね。

日本のミニシアターブームの火付け役となったと言われる今作は、短いセリフで締め、さっとエンドロールに切り替わるラストもいい。ぜひご賞味あれ

 

ライター中山陽子でした。

 

バグダッド・カフェ(1987)

監督 パーシー・アドロン
出演者 マリアンネ・ゼーゲブレヒト/CCH・パウンダー/ジャック・パランス/クリスティーネ・カウフマン

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