【シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア】
ジワジワくるヴァンパイアの同居ホラー・コメディ

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア　あらすじ

ニュージーランドの首都ウェリントンにある古びた屋敷には、ヴァンパイアのヴィアゴ、ディーコン、ヴラド、ピーターが同居している。彼らのドキュメンタリーを制作するため、撮影スタッフは安全を確保したうえで密着取材を決行。すると、意外にもヴァンパイアたちは、共同生活をよりよいものにするためミーティングを行い、ルールを決め、掃除などを行っていた。また、気ままに歌ったり踊ったり、パブで遊んだりして、楽しむことも忘れていない。そんなある日、8000歳という最年長のピーターが、うっかり「食事」にするはずのニックをヴァンパイアに変えてしまう。新米ヴァンパイアのニックはルールを重んじず、人間の親友スチューをシェアハウスに連れてきてしまい……。

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シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア　レビュー

現代社会で共同生活を送るヴァンパイアたちが、いかにして暮らしているかを、モキュメンタリー形式で描いているホラー・コメディです。最初から最後までジワジワくる面白さがまとわりつきますが、一応ヴァンパイアなどのモンスターが主体のホラー映画だけに、血が多くグロテスクな描写もあります。

ほかに、狼男やゾンビも登場しており、ブルーレイの特典映像では、そんな彼らが取材を受けるやたら長いシーンも観ることができます。ゾンビは自分たちに対するイメージに不満を持ち、狼男は妻の理解に感謝しています。ヴァンパイアの召使いをしている人間が、胸の内を語る様子も見れます。俳優さんたちが真面目な顔で即興演技をしているのが面白くて、ずーっとニヤニヤしながら観ていたのですが、サービス旺盛なのか成りきりインタビューがあまりにも長すぎて、途中から飽きてしまいました。

恐らく、個々の長～い成りきりインタビューと、シェアハウスや外でのシーンを組み合わせて、上手にまとめたのでしょうね。試みの興味深さだけではなく、物語としても面白くなっています。色々血だらけでズタズタですが、不思議と最後にはハッピーエンド。トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門や、シッチェス映画祭などで観客賞を受賞しました。

 

監督は、ともにニュージーランド出身の、タイカ・ワイティティさんと、『メン・イン・ブラック3』などの出演で知られるジェマイン・クレメントさんが共同で行っています。

タイカ・ワイティティさんといえば、映画『ホビット 決戦のゆくえ（2014）』公開にちなんで製作された、ニュージーランド航空の「壮大すぎる機内安全ビデオ」で、監督・出演を務めたことで知られています。最近では、『マイティ・ソー　バトルロイヤル（2017）』でも監督・コーグ役を務め話題になりました。

今作でも2人の監督は個性的なヴァンパイアを演じており、ゆるい笑いをジワーッと運んでくれます。ちなみに、ヴァンパイアを演じるジェマイン・クレメントさんは、ちょっぴりベニチオ・デル・トロさんに似ているかも。

バカバカしいことを、徹底的に本気でつくりあげる素晴らしさを、この作品は体現しています。観ていると、本当にヴァンパイアのドキュメンタリーを観ている気になってしまうのが不思議。ロバート秋山さんの、クリエイターズ・ファイルと通づるところがあるのではないでしょうか。（違うか）

 

なお、人間のスチューを演じたのは、スチュー・ラザフォードさん、本人役です。「僕はIT系なんだ」という自己紹介も実は本当。ニュージーランドの首都ウェリントンにあるヴィクトリア大学を卒業後、IT系の仕事に就いたそうですが、大阪にあるデザイン会社で2年間働いたこともあるそうですよ。ただし、役者さんとしてもキャリアを築いています。『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』で知られるピーター・ジャクソン監督が、オーストラリアの戦没者記念博物館のために作った短編映画『Over the Front』では、第一次世界大戦時のパイロット役を演じたそう。

シャアハウスで暮らすヴァンパイアたちが、ひたすら人間のスチューが大好きで「彼だけは絶対に噛まない」という設定が妙に微笑ましく、観ているうち、欲も裏表もないスチューが本当に魅力的に見えてきます。スチュー・ラザフォードさんの演技もよかったのでしょう。ヴァンパイアたちと同様に、観客の筆者も癒されてしまいました。一見凡庸に見えて、この世で最も出会いにくいのが、スチューのように純粋な人間かもしれませんね。

 

そんな、何気に奥深い（かどうかは分からんが）、ヴァンパイアたちの“ゆるーい生活”とハプニングを描いた映画『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア（2014）』は、売ってはいけない1本といえるでしょう。もちろん、ご判断は皆様次第です。

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タイカ・ワイティティさんと、スチュー・ラザフォードさんは同じ高校出身で、タイカ・ワイティティさんとジェマイン・クレメントさんは、同じ大学出身なのだそうです。同窓生だけにチームワーク抜群だったんですね！

ライター中山陽子でした。

 

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア（2014）

監督　タイカ・ワイティティ／ジェマイン・クレメント
出演者　タイカ・ワイティティ／ジェマイン・クレメント／ジョナサン・ブロー／コリ・ゴンザレス

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