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CINEMAバリQ

【プーと大人になった僕】
かわいくて哲学的な大人に観てほしいファンタジー

大人になったロビンは人生の迷子に――「プーと大人になった僕」

【あらすじ】

“100エーカーの森”で、くまのプーや仲間たちと一緒に楽しい日々を過ごしていたクリストファー・ロビンは、寄宿舎に入るため彼らと別れることに。それからずいぶん時が過ぎ、すっかり大人になったロビンは、子供の心を忘れ効率化だけの世界で生きるようになっていた。仕事漬けで常に余裕がなく、妻や娘との関係はギクシャクしており、パワハラ上司は無理難題を押しつけてくる始末。色々なことに頭を悩ませていた彼の前に、かつての大親友プーが、昔のままの姿で現れる。

この映画の買い取り価格→→→ 『プーと大人になった僕

僕は“何もしない”を毎日やっているよ――「プーと大人になった僕」

【レビュー】

A・A・ミルン氏の児童小説『クマのプーさん』と、ウォルト・ディズニーの『くまのプーさん』を原作とした映画です。予告を観た際、キュンとして切なくなってしまった方なら泣いてしまうこと間違いなし。筆者の場合、プーさんが現れてから最後までティッシュを手放せませんでした。

素朴で静かな世界観のなかに、キャラクターの愛くるしさと、子供時代への郷愁がギッシリ詰まっています。映画が始まってすぐに物語の展開は想像することができ、結果的に“そのまんま”だったという印象ですが、かわいいキャラクターに癒され、奥底からわきあがってくる感情に心を揺さぶられ続けるので、まったく飽きません。

そして、この映画を観たあとは、効率化、生産性、ムダを省く等々、数々のライフハックをインプットしたりアウトプットしたりすることにばかりに、重きを置こうという気になれなくなってしまいます。

日々忙しく過ごす人は、たとえば休日、意識的に何かを達成できなかった場合、「あー、何にもできなかった」という言葉を思わず発するのではないでしょうか。そんなときプーさんは、きっと「僕は“何もしない”を毎日やっているよ」と言ってくれるでしょう。

「昨日」と変わらない「今日」を嘆く人には、「今日は、ぼくの大好きな“今日”だ!」と嬉しそうに話しかけてくるかもしれません。

【登場人物と出演者】

ぬいぐるみやCG用のダミーを相手に、多くのシーンを1人で演じていたユアン・マクレガーさんは、大人になったクリストファー・ロビンを演じています。「自分のなかの子供を表現できる役者さん」とスタッフからも太鼓判を押されているだけあって、ロビン役にピッタリとハマっていました。

その美しい妻、イヴリンを演じるのはヘイリー・アトウェルさん。彼女がマーベルのキャラクターを演じる、1940年代を舞台にしたドラマ『エージェント・カーター』もそうですが、エレガントな女性なので、古い時代を背景にした作品がよく似合います。

とっても食いしん坊な、くまのプーさんの声は、アニメ『くまのプーさん』シリーズでもお馴染みのジム・カミングスさん。プーさんの声優さんとしては3代目の方ですね。優しく味わい深く、ちょっとかすれた温もりのある声が、無条件で涙を誘います。自分を卑下するわけでも自己憐憫に陥るわけでもなく、ただ素直に「ぼくは“おつむ”が小さいから」とプーさんは自己分析しますが、彼が無意識に発する言葉はどれも哲学的。彼を「おばかさん」と呼ぶのは、その愛嬌を称えているからなのです。

しっぽがバネで、ビョンビョン跳ねるのが大好きなトラのティガーの声も、同じくジム・カミングスさんが演じています。アニメ版のトラ柄よりも、この実写版での素朴なぬいぐるみテイストのほうが断然「抱っこしたい欲」がうずきます。負けん気だけど、笑い顔が最高にキュート(というか、いつも笑っている)。

そして、個人的に一番好きなのは、常に敬語でスーパーネガティブなイーヨーというロバのキャラクターです。ティガー同様アニメ版よりも、実写版のほうがモフモフしているので「抱っこしたい欲」をくすぐります。とにかく物事すべてを悲観的に捉えますが、達観している部分もあり、パワハラ上司にガンを飛ばす強さも兼ね備えています。声は、俳優・声優・コメディアン・プロデューサーであるブラッド・ギャレットさん。

“たまらないほどかわいい!”と評判のピグレットは、ちょっと気弱なピンク色の小ブタさん。ネル素材を毛羽立てたような質感で、いつも両手を前にして握り、赤いマフラーをしています。臆病な子ブタちゃんですが、トンクリ(どんぐり)には目がないので、どんなに危険でもトンクリだけは手放しません。声はコメディアンでもあるニック・モハメッドさん。

また、ぬいぐるみたちと大活躍するクリストファー・ロビンの娘マデリンを演じるのは、ブロンテ・カーマイケルちゃん。撮影中は、ピグレットが大のお気に入りだったよう。

監督は、『ネバーランド(2004)』『主人公は僕だった(2006)』『マシンガン・プリーチャー(2011)』『007 慰めの報酬(2008)』のマーク・フォースターさん。こうして作品を並べてみると、守備範囲がめっぽう広いですね。

ラビットカンガルーオウルといったお馴染みのキャラクターも、もちろん登場しています!

【結論】

かわいいキャラクターがたくさん登場する『プーと大人になった僕』は、子供だけではなく、疲れた大人の心にも大いに響くファンタジー映画です。ぜひ存分に癒され、哲学的な言葉に教わり、大切なひとを思いだして、プーさんに倣い「何もしない日」を実践してみてください。エンドクレジットでは、レジェンドと呼ばれる方のパフォーマンスも拝めますよ

ライター中山陽子でした。

 

プーと大人になった僕(2018)

監督 マーク・フォースター
出演者 ユアン・マクレガー/ヘイリー・アトウェル/ジム・カミングス/ブラッド・ギャレット

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