9月の平均買取価格 8,680円
平均買取点数63点、お客さま1件あたりの平均買取実績です。

CINEMAバリQ

【くろねこのジーニャ】
プロンプトから生まれた、奇妙で愛おしい「擬人化ネコさん」の成長劇 ※ネタバレあり

『くろねこのジーニャ』あらすじ

ある日突然、大好きな人を失ってしまった一匹の黒い飼い猫。初めて野良猫として、過酷な世界で生きることを余儀なくされてしまう。

その猫の名はジーニャ。言葉は話せないけれど、まるで人間のような所作をする。

ジーニャはさまざまな人間や動物と出会いながら、ある目的のため懸命に働いて、少しずつお金を貯めていく。

そんなジーニャの前に、意外な存在が現れる。孤独は少し遠のいたが、いままで以上にジーニャは働いて、稼がなければならなくなってしまった――。

『くろねこのジーニャ』レビュー※ネタバレします!

● いつの間にかその世界観にカラダすっぽり

作家・映画監督の安達寛高(乙一)氏が、全編生成AIで制作した映画です。

最初は「全部AIかぁ」と先入観バリバリの状態で鑑賞を始めたので、なかなか集中できず、「うわ、やっぱり(人間の登場人物が)アップになると怖い」「背景がいかにもAIだな……」などと感じておりましたが――

いつの間にか、生成AIでつくった云々は関係なくなり、その黒猫「ジーニャ」が生きる世界を共有しておりました。

頑張る猫さんの健気で一生懸命な姿に、あるいは、どこか飄々として、なんだか少し可笑しい姿に、すっかり感情移入してしまったのです。

● ひたすら運命に和する「ジーニャ」さん

ジーニャは人間ではないので、限りなく自然体です。自分が “他者からどう見えるか” なんて気にしないし、「こうすべき」という判断基準もありません。

そんなスタンスで彼(彼女は)――

郵便配達を手伝ったり
レストランで給仕をしたり
花屋さんを手伝ったり
スーパーで働いたり
工事現場で働いたり
児童養護施設でお手伝いしたり

――するのです。

「大好きな人と暮らした場所に戻りたい」ジーニャの目的はそれだけ(途中で転換しますけどね)。だから、どんな状況が目の前に現れても、自分ができること・求められることに専念できます。

そんなジーニャの姿を見ているうち、モンゴルの巨大炭鉱を手がける実業家の方が語っていた【運命に和せよ】という言葉を思い出しました。

中国とロシアという2大国に囲まれたモンゴルの企業として、どうにもならないことを受け入れながらも国益を守るため、しなやかに渡り合う姿を言い表したような言葉。

内容は大きく違いますが、ジーニャはその「運命に和せよ」という言葉を、体現していたようにも思えます。

● 大好きな人の教え

この物語の中で描かれているジーニャの大切な存在は、「1人」と「1匹」です。

特に、ジーニャが子どものころから一緒にいた前者の影響は大きいはず。この人物のお陰で、ジーニャは猫でありながら「奪わず、傷つけず、欺かず、分かち合う」といった基本的な倫理を備えています。

前段で紹介した「運命に和する姿」とも相まって、筆者は観進めるほど、この「猫」というより「存在」に身が引き締まる思いでした。

“頑張っている感” が一切ない無表情な猫が(黒い毛でディテールが見えにくいのでなおさら)、ただ、運命を受け入れながら起こった出来事に対応し、時には柔軟に目的を変えつつ「生きる姿」は、とても自然で、でも簡単にできることではない「見習うべき姿」でした。

これはあくまでも推測ですが――

制作者側には、「猫の、人に寄り添う役割・能力を改めて認識する」という、そこに帰結させるような意図があったかもしれません。ジーニャが大好きな人の教えでもあるからです。

しかし、筆者はただ淡々と、でも懸命に、正しく生きるジーニャの姿そのものにこそ、深く心を揺さぶられました。「ジーニャから見たら、自分はそれほど大変じゃないし、頑張ってもいない」と感じてしまいましたよ。笑

● 優しさいっぱいのラスト

ちなみに、この物語はよくある悲しい終わり方ではありません。

過酷な世界を生き続けていることには違いありませんが、報われる部分もちゃんとあります。しかも、ちょっと楽しそう。個人的にも、優しい終わり方だったので安心しました。もしも、悲しい結末だったら、この作品がちょい嫌いになっていたかも。笑

58分という短い作品ですが、見ごたえバッチリ。ちょっと笑わせる部分もあり、安心して鑑賞できるはずです。

よろしければ、ぜひお楽しみください。

(ライターgatto)

『くろねこのジーニャ』(2026)

監督:安達寛高
出演者:早瀬莉花

観終わったDVDはバリQへ