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CINEMAバリQ

【スポットライト 世紀のスクープ】
タブーに立ち向かったジャーナリスト魂の映画

スポットライト 世紀のスクープ 映画あらすじ

マサチューセッツ州ボストンの日刊紙『ボストン・グローブ』にやってきた新しい局長マーティン・バロンは、過去うやむやにされていた事件の調査と取材を、わずか数人の精鋭チーム”スポットライト”にもちかける。その事件というのは、神父による子供への性的虐待であった。当初、それは小さな事件だと思われていたが、実際には、世界中のカトリック教会を揺るがすほどの大スクープへとつながるものだった。しかし、長くタブーとされていた真相究明は、数々の抵抗と反発を生み困難を極めた。

スポットライト 世紀のスクープ 映画レビュー

2002年アメリカは、長きにわたりカトリック教会等で行われていた、おびただしい数の児童性的虐待を明るみに出した。口にすることさえタブーとされていた、そのおぞましい事実を、ただならぬ根気と粘り強さ、そして強じんな意志でやりとげたのは、マサチューセッツ州ボストンにおいて最大の部数を発行する日刊新聞の『ボストン・グローブ』だ。

ライバルの日刊新聞『ボストン・ヘラルド』を出し抜きたい、大スクープをものにしたい。そんな野望はもちろんあったにせよ、調査と取材を重ねるうち、彼らの心に「怒り」がふつふつとみなぎったのだろう。そうでなければ、あれほど巨大な権力に怯まず立ち向かうことは難しい。

もはや、「正しいことをしたい」という気持ちを萎えさせてしまうほど権力をもつ組織とは、全世界に10億人以上の信者がいるというローマ・カトリック教会のことである。

この映画を鑑賞し、9.11というアメリカにおける未曽有のテロ事件が勃発した当時、もうひとつの全世界に及ぶ根深い事件に、わずか数人のジャーナリストたちが奔走していたことを知った。広い世界では常に何かが起こり、我々はそのなかを泳ぎ生きている。何もしなければ、難を逃れて生きられるかもしれない。そのかわり、いいことも悪いことも、自分自身も埋もれてしまう。

でも、この実話をもとにした物語の主人公たちは、小さな団結と実行力で、大罪を隠ぺいし続けた巨大な権力の足元をぐらつかせるという偉業を成し遂げた。なおかつ、過去の無関心が、もっと早く究明できていたかもしれないという事実も知るのだ。

「真実をつきつける」という言葉がある。その言葉どおり、どんな歴史が教科書に残されたとしても、どんなかたちで理不尽な事件が終結しようと、真実はひとつしかない。解釈も理解もへったくれもないのだ。どんな見解があろうと“真実はただひとつ”。水戸黄門の印籠のごとく、それには多大な効力がある。ボストン・グローブのスポットライトチームは、ただ、その真実だけを追い求めた。

映画自体もジャーナリズム精神にのっとり、真実をそのまま伝えようとしていた感がある。実在している組織、新聞、人物の名前もそのまま使用され、下手な脚色はあまりない。限りなく地味で、とても慎重につくられている印象だ。それゆえに、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー、スタンリー・トゥッチらの、演技のうまさが際立った。

途中、マーク・ラファロが上司に吠えたシーンは、いかにも映画という感じだったが、きっと実在の人物たちも、当時は相当のストレスを感じながら信念だけで踏ん張っていたのだろう。

実力のある役者さんたちが、それぞれ魅力的な演技を披露していたが、意外に目立った評価がないけれど、ユダヤ人の局長バロンを演じたリーヴ・シュレイバーの、静かで温厚で思慮深く、強く揺るぎない意志と実行力がある男の演技が、とてもよかった。

 

ライター中山陽子でした。

 

スポットライト 世紀のスクープ(2015)

監督 トム・マッカーシー
出演者 マーク・ラファロ/マイケル・キートン/レイチェル・マクアダムス/リーヴ・シュレイバー

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