【教授のおかしな妄想殺人】
もやもや感を残したウディ・アレン作品
教授のおかしな妄想殺人 映画あらすじ
アメリカ東部の大学にやってくる前から、さまざまな噂や憶測が広まっていた哲学の教授エイブ・ルーカスは、人生に絶望し無気力な日々を送っていた。彼のまわりに引き寄せられてくる女性たちは、エイブの興味をわずかに刺激するものの、人生を活気づかせるまでには至らない。しかし、ある日たまたま悪徳判事の存在を知ったエイブは、その判事を完全犯罪でこの世から抹殺しようと計画しはじめる。そして、それが思いのほか、彼のみなぎるような活力となっていく。
教授のおかしな妄想殺人 映画レビュー
伏線も無理なくきれいに回収し、リズミカルにまとまった脚本。そつのないキャスティングとセリフ。監督と脚本はウディ・アレン。そして、もやもやした嫌な気分があとを引く。それがこの作品だ。
そう感じてしまったのは恐らく、自分が登場人物たちに共感できないからなのだろう。しかも、それこそがリアルな世の中だとも思っている。それが余計に胃をムカムカさせるのだ。
絶望という布団にくるまってダラダラするエイブ・ルーカス教授は、その孤独な繊細さが受けてピチピチなギャルも熟女も惹きつけた。しかし、そっちの方面では本能に突き動かされず、「世直し」に執着することで生きる意味を見出し、生気を取り戻す。
そこまでは良かったが、結局はただ単に、自分が充実することだけを求める身勝手な男だったのである。ああ胃がムカムカする。
エイブに夢中になる、美しく魅力的な生徒ジル・ポラードは、優しくて真面目で、しかもハンサムな彼氏がいながら、堂々と「ひとりに絞れないの」と公言し二股をかけまくる。途中、正しくあろうとするが、もはや人物自体に共感できず。ラストシーンでは、またもや都合のいい身勝手なことを言い放ち、ちゃっかり黄昏ている。あー胃がムカムカする。
もうひとり、エイブにフェロモンを出しまくっていたリタ・リチャーズ教授の場合は、潔いほど初めから自由奔放で身勝手な女だったので、論外すぎて胃のムカムカも忘れてしまった。
真面目でハンサムで優しくて、どんなに彼女のジルからひどい仕打ちを受けても許し、優しく受け入れる大学生ロイは、人が良すぎてイライラさせた。こんな男性ばかりになったら、二股三股四股女たちが世界を席巻するだろう。最後には「あなたに酷いことをしてしまった私がバカだったわ……」と言えば、すべて許されるのだから。
と、このように、人間がもつ愚かで浅はかで醜悪な部分を、ウディ・アレン監督らしく小粋にブラックに描いたこの映画は、登場人物たちにムカムカ・イライラさせられはするものの、笑えはしないが面白い。
因果応報の思想を感じるような展開もあるので、観終わったあと「理不尽すぎる!」と絶叫したくなるような映画でもない。
実用性を重んじたジル・ポラードを助けた“もの”の役割には、ウディ・アレン監督らしいユーモアを感じることもできた。実力派ホアキン・フェニックスの演技力やオーラも堪能できる。あのボヨヨンとしたお腹が役づくりのためだとしても、そうでなかったとしても、哲学とある種の情熱以外に興味をもたず、自分の容姿に頓着しないけれど魅力的な男を見事に演じていた。
また、ジルを演じたエマ・ストーンは、ますます美しさに磨きをかけている。しかしながら、『ペーパーマン(2009)』のアビー役があまりにも魅力的だったせいか、この作品のような役柄ではなく、孤独で繊細な女性を演じてほしいと、ついつい思ってしまう。
ライター中山陽子でした。
教授のおかしな妄想殺人(2015)
監督 ウディ・アレン
出演者 ホアキン・フェニックス/エマ・ストーン/パーカー・ポージー/ジェイミー・ブラックリー
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