【昼下がり、ローマの恋】
恋愛最優先？　なイタリアのロマンティック・コメディ

昼下がり、ローマの恋　映画あらすじ

初めは婚約者がいながら、仕事で訪れた田舎町で奔放なセクシー美女に惹かれてしまう青年ロベルトの物語。次は、一時の気の迷いですべてを失ってしまった中年ファビオの物語。最後は心臓移植手術のあと、多くのことに慎重だった老年エイドリアンが恋に奮起する物語。年齢問わず情熱的で開放的な恋が盛んなイタリアの、笑いにあふれた3つの恋物語。

 

昼下がり、ローマの恋　映画レビュー

主演カップルがロバート・デ・ニーロとモニカ・ベルッチという、エスプレッソにコンデンスミルクを混ぜたような、アン肝に白子をトッピングしたような、カルボナーラがなかに入ったチーズグラタンのような……、とにかくそんな濃いイメージのキャスティングに惹かれ、これは観るっきゃないとワクワクして鑑賞。するとこの作品、3つの物語からなるオムニバス映画だった。案の定、メインイベント的なデ・ニーロ親分とベルッチ姐御の「濃い物語」、じゃなくて「恋物語」は最後だったが、思いのほか最初の青年カップルによる物語が爽やかで、とても良かった。

その、（濡れ場はあるが）爽やか青年の恋物語で主演していたリッカルド・スカマルチョの色気にあふれた目が、なんとなく若いころのベニチオ・デル・トロに似ていると思ったら……、どうやら彼は、かつてベニチオ・デル・トロの婚約者だったヴァレリア・ゴリノと、実生活ではパートナーのようだ。

そのリッカルド・スカマルチョが演じたロベルトは、出世意欲に燃えた若手の弁護士。この映画のなかの物語すべてが事故レベルの恋物語なので、もちろんロベルトもご御多分に洩れず、立ち退き交渉のため訪れた田舎町で婚約者以外の女性とおイタをする。

「なんだこの浮気男」と最初は思ったが、観進めていくうちに、大人になりきれていなかった青年の素直な感情表現に微笑ましさを覚えた。そして、呑気で気のいい田舎町の連中もいい味を出していたが、なんと言ってもロベルトの婚約者の、いい女レベルの高さに脱帽だ。

なお、この映画で注目すべきなのは、もちろん危うい恋の行方なのだが、ちょっとしたイタリアの生活風景も見逃せない。

イタリア人にとっては普通だと思うが、田舎町のカフェも東京で言ったら青山的な雰囲気だ。外にあるカフェのテーブルにオッサンらが集まりワインを飲んだり、パニーニを頬張ったりと、やたらにお洒落なのだ。

また、ロバート・デ・ニーロ演じるエイドリアンの家も素敵な印象だった。老年期にさしかかった独身男性の家なので飾り気はないが、健康的で豊かな生活があると感じさせるナチュラルなインテリアは、妙に大人の雰囲気を感じさせた。そして、その「豊か」という表現の最たるものは、彼の家のテラスである。自然にあふれたテラスで日の光を浴びながらフルーツいっぱいの朝食を食べたり、お酒を飲みながら花火を眺めたりしているライフスタイルには、本当にウットリだ。

ただ、花火のくだりでは、アダルト過ぎる2人（ロバート・デ・ニーロとモニカ・ベルッチ）のストリップショーで、テラスどころではなくなってしまったが。それに加え、モニカ・ベルッチの胸が大き過ぎるため、老若男女平常心を保てる人が少ないかもしれない。仰向けに寝ていてもあの大きさを保てるのはすご過ぎる。

吉田戦車氏の『伝染るんです。』だったかうろ覚えだが、思わず漫画のなかの「『ベランダ』って、胸の大きいイタリア女性みたいな名前だな、へへ（先輩）」「へへ（後輩）」「へへ（先輩）」という漫画のワンシーンを思い出してしまった。本当にどうでもいい記憶なのだが、そんな記憶を呼び起こすほど、モニカ・ベルッチの胸はでっかい。

ちなみに、2話目はファビオというニュースキャスターの恐ろしい恋の物語だが、これは『危険な情事（1987）』のコメディ版という感じだ。浮気心がウズウズしている人はこの物語を観て、ちょっとのおイタが人生を破滅にまでに追い込むかもしれないと、気持ちを正すといいかもしれない。しかもファビオの場合、3話目にチラッと顔を見せた際、もはや笑えないレベルにまで追い込まれていた。あのジョーク、日本の映画では絶対あり得ないだろうなあ。

自分のように保守的な日本人の感覚からすると、「恋愛至上主義なイタリア人らしい、愛にあふれた映画」という生ぬるい表現では追いつかない。
「えっ?!」な部分もあるが、可哀そうすぎるファビオ以外はハッピーな物語なのでぜひご賞味あれ。イタリア語を話すデ・ニーロ親分も一見の価値ありだ。ちなみに、この映画はジョヴァンニ・ヴェロネージ監督による『恋愛マニュアル』シリーズの第3弾である。

 

ライター中山陽子でした。

 

昼下がり、ローマの恋（2011）

監督　ジョヴァンニ・ヴェロネージ
出演者　ロバート・デ・ニーロ／モニカ・ベルッチ／リッカルド・スカマルチョ／カルロ・ヴェルドーネ

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