【それでも、やっぱりパパが好き！】
ハチャメチャで愛にあふれたパパと娘とママの物語
それでも、やっぱりパパが好き！ 映画あらすじ
1970年代後半。キャムとマギーは2人の娘とボストンで暮らしている。しかし、夫のキャムは躁うつ病を患っており、失業を繰り返すばかりか異常な行動をとるようになっていた。収入のない夫に代わり働きながら子育てをしていたマギーだったが、どんどん苦しくなる生活に限界を感じ始める。そこで、もっと高い収入を得られるようMBAを取得するため、ニューヨークの大学院へ行くことを決意。週末だけは自宅に戻るものの、大半は躁うつ病の父キャムと娘たち2人だけの生活になる。そこから家族は手探りで、それぞれの新たな生活を始めた。
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それでも、やっぱりパパが好き！ 映画レビュー
演技派として知られるマーク・ラファロさんが、俳優としての本領を発揮した作品でした。娘たちとのやり取りはとても自然で、本当の親子にさえ見えてしまいます。また、躁うつ病なので気分の浮き沈みがあり、躁状態のときはすぐにカッとなってしまうのですが、その演技も非常にリアルで圧倒されました。そのままハルクに変身しちゃうんじゃないかと思いましたよ。奥さんは宇宙最強のヴィラン、サノスの娘だし。
そう、マーク・ラファロさん演じるダメダメ夫キャムの、優秀で美しい妻マギーを演じたのは、マーベル映画でガモーラを演じているゾーイ・サルダナさんです。スタイル抜群なので、70年代のファッションもよく似合っています。マーベル目線ではハルクとガモーラという最強カップルですが、この物語の中では、なんとか苦難を乗り越えようと必死にもがく、ただの人間でしかありません。しかし、無力ながら家族を愛して精一杯に生きる姿は、むしろ輝きでしかないのです。
躁うつ病を患うキャムは、まるで子供みたいでハチャメチャで、時に家族を不安に陥れます。しかし、その何百倍も何千倍も大きな愛を家族に注ぎます。決して頼りになる父親ではないかもしれないけれど、彼はいつも子供たちのそばにいて（時々ケンカすると飲みに行っちゃうけど）、常に一緒に遊んで、一緒に食事をとり、彼女たちの成長を見守っているのです。
この映画では、父親の娘たちへの深い愛と、娘たちの、なかなか子離れできない子供のような父親への深い愛が描かれています。躁うつ病の働けないお父さんが中心の物語ですが、何か大きな事件が起こるわけでもなく、深い絶望もなく、驚くような奇跡もありません。ただ、淡々と、ちょっと風変わりでおかしくて、愛に満ちた物語が87分という短い時間の中にまとめられています。それがどうにも、心に深い印象を残すのです。父娘の「手を振ってからの、控えめな片腕ファイトポーズ」はとても良かったですね。
しかし、観ているぶんにはいいですが、実際には本当に大変なこともたくさんあったことでしょう。この映画の脚本は、『モンスターVSエイリアン（2009）』や『僕のワンダフル・ライフ （2016）』などを手がけた脚本家マイア・フォーブスさんが、自身の父親と家族をモデルに執筆したものなのです。それを、自ら初メガホンをとって完成させたそう。しかも、長女のアメリア役を演じたのは、フォーブス監督の実娘イモージェン・ウォロダースキーちゃんとのこと。
そのせいなのでしょう。この映画には、淡々とした中にとても深い家族の愛を感じることができます。ちょっとわずらわしくて、泣きたくなるほど愛おしい家族という存在。何か特別な感動があったわけではないのに、その面倒で愛おしい愛のイメージが映像と共に、心に焼きつけられてしまいました。
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この物語が実話だとすれば、監督のママは相当に優秀な方ですね。躁うつ病の夫をサポートしながら、子育てしながら、働きながら、コロンビア大学の大学院MBAコースの奨学生に合格、しかも18ヵ月のあいだニューヨークとボストンを行ったり来たりして、とうとうMBA取得とはすごい。そもそも、パパも育ちのいい優秀な青年だったそう。その頭脳を監督も受け継いだのですね。
ライター中山陽子でした。
それでも、やっぱりパパが好き！（2014）
監督 マイア・フォーブス
出演者 マーク・ラファロ／ゾーイ・サルダナ／イモージェン・ウォロダースキー／アシュリー・アウフデルハイデ