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CINEMAバリQ

【ゲティ家の身代金】
実際に起きた誘拐事件と希代のドケチを描く映画

誘拐された少年の祖父は世界一ケチな大富豪「ゲティ家の身代金」

【あらすじ】

1973年7月のローマ。石油王ジャン・ポール・ゲティの孫、ジョン・ポール・ゲティ3世が誘拐されるという事件が起こる。誘拐犯は 1,700万ドルもの身代金を要求。しかし、50億ドルの資産を持つ世界一の大富豪でありながら、稀代の吝嗇家でもあるジャン・ポール・ゲティは身代金の支払いを拒否。離婚により、すでにゲティ家から離れていた3世の母アビゲイルは、誘拐犯と、守銭奴ジャン・ポール・ゲティ双方と闘うことを余儀なくされる。

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いろいろあったけど何とか丸くおさまった?「ゲティ家の身代金」

【レビュー】

ジャン・ポール・ゲティは実在した人物。「資産を数えられるくらいなら、まだ富豪とは呼べんだろう。ハッハッハッ」などといってしまうほどの大金持ちでした。その人となりは、孫の身代金を出し渋りながら高額な美術品を購入したり、来客から電話代を徴収したり、安いもんしか人にあげなかったりといった行動で察しがつきます。クリーニングには出さず、自分で洗うのは偉いと思いますが。

世界一のお金持ちというよりは、宇宙一ドケチなジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐されるところから、この映画は始まります。

しかし、物語や、個性的すぎる実在の人物以上に、ジャン・ポール・ゲティ役だったケビン・スペイシーさんがセクハラ騒動で降板し、なんとたった1ヵ月で再撮影したことや、撮りなおしの際、俳優さんらのギャラに極端な格差が生じていたこと、しかも、急遽スペイシーさんのかわりに同役を務めることになったクリストファー・プラマーさんが、ゴールデン・グローブ賞助演男優賞やアカデミー賞助演男優賞にノミネートされてしまったなど、驚くべきエピソードが生まれました。

ほかにも第75回ゴールデングローブ賞の監督賞や、主演女優賞などにもノミネートされています。

メガホンをとったのは、巨匠リドリー・スコット監督。難しい撮りなおしを決意し、しっかりと結果を出したことで、またもや新たな伝説を生んだといえるでしょう。

ただ、個人的には、ジョン・ポール・ゲティ3世の母アビゲイルの言動にキレがなく、その役を演じたミシェル・ウィリアムズさんの演技力もあまり発揮されていなかったように感じました。鑑賞中、アビゲイルに対して何度も思ったのは、

「いい加減、目を開けて話さんかい」

演技力のある役者さんは目の色だけで心の機微を見せてくれるので、ミシェル・ウィリアムズさんのそうした演技も堪能したかったのですが、どうも目を閉じたままの状態が多くて……。実話がもとになっている作品らしい、抑えた演技であればなおさら、ときおり目の色を見せてほしかったわけです。でも、やはり、

「私のギャラだけ、少ないんじゃねえのか?」

と目を閉じて、グッとこらえていたのかもしれません。

【登場人物と出演者】

アビゲイルは、石油王ジャン・ポール・ゲティの三男、ジョン・ポール・ゲティ2世の妻でした。しかし、2世がドラッグ中毒の浮気男であったために離婚。何も受け取らずゲティ家を離れた彼女には、財産などありません。まあ、それにしては、家政婦さんがいる大きな家に住んでいた気がしますが。

誘拐事件が起こったのは、女性解放運動が先進国に広まり始めていた70年代。たったひとりの女性が、大富豪のケチな舅と取り巻きにモノ申すのは、並大抵のことではなかったでしょう。しかし、彼女は物怖じせず堂々と、自分の意見を言える女性でした。公開中の『ヴェノム(2018)』ではアン・ウェイング役のミシェル・ウィリアムズさんが演じています。

ジャン・ポール・ゲティは、家族よりもお金と美術品を信じる大富豪。あの守銭奴っぷりを見てしまうとあまり同情する気にはなれませんが、ラストシーンは少しばかり哀れでした。そう感じたのは、クリストファー・プラマーさんの演技が素晴らしかったせいでしょう。貫禄と存在感、そしてカリスマ性があり、このうえなく上質。非の打ちどころがありません。

ジャン・ポール・ゲティに雇われているフィクサーであり、3世の誘拐事件では交渉役として裏で動いた元CIAのフレッチャー・チェイスは、意外にも心のある人物でした。絶対的な権力をもつ雇い主に、ガツンと強烈な言葉をぶつけています。演じたのは、せっかく筋の通ったいい役柄だったのに、後にギャラ問題でミソがついてしまったマーク・ウォールバーグさん。

ジョン・ポール・ゲティ3世はとてつもない大富豪の孫として生まれながら、幼いころはごく普通の家庭で育ちました。その後、ジャンキーの父親と生活したり、人質になったりと、数奇な運命をたどります。身代金は出し渋りましたが、ジャン・ポール・ゲティにとっては特別な孫とのこと。演じたのはチャーリー・プラマー君。相当エグいシーンがあります。

誘拐犯のひとりチンクアンタは極悪非道ながら、ちょっと歪んだ人情味を持ち合わせています。3世が家族に愛されていないと感じ、共感したのかもしれません。いずれにせよ、なかなか魅力的な悪党でした。演じるのは『真夜中のピアニスト(2005)』のフランス人俳優、ロマン・デュリスさん。この作品ではずっと薄汚い姿なのですが、実際は繊細な雰囲気の男前です。

【結論】

ジョン・ピアースンが1995年に発表したノンフィクション『Painfully Rich: The Outrageous Fortunes and Misfortunes of the Heirs of J. Paul Getty』を原作としたこの映画は、出来上がるまで、出来上がってからも大変でしたが、大いに話題となり、なおかつ高い評価を受けた作品です。

作品全体にあまり抑揚はないものの、俳優さんらの演技は秀逸です。ただ、ミシェル・ウィリアムズさんの苦悩した演技だけは、しつこいけど「目を閉じすぎ」かもしれません。

ライター中山陽子でした。

ゲティ家の身代金(2017)

監督 リドリー・スコット
出演者 ミシェル・ウィリアムズ/クリストファー・プラマー/マーク・ウォールバーグ/チャーリー・プラマー

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