【ゼイリブ】
エイリアンを使ってヤッピーと資本主義を批判した伝説のSFホラー映画
“どうもうまくいかない”はエイリアンの仕業!?「ゼイリブ」
【あらすじ】
世の中は貧富の差がどんどん激しくなり、至るところに失業者があふれていた。仕事を求め町に流れ着いたナダは、かろうじて得た肉体労働の仕事で出会ったフランクに、寝泊まりできるキャンプ地へと案内される。そこでナダは、近くにある教会の不審な動きに気づき、こっそり探り始めるが、実際におかしなことが起こっていたのは、彼がいる世界そのものだった……。
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トランプ政権時代に再び盛り上がるカルト人気SF映画「ゼイリブ」
【レビュー】
30周年を記念して、2018年9月よりHDリマスター版でリバイバル上映されているこの映画『ゼイリブ』は、カルト的な人気を誇るSFホラー映画ですが、ヤッピーと資本主義を痛烈に批判した風刺的作品でもあります。むしろ、その要素があったからこそ、ここまで人気を得たのかもしれません。
しかし、近年は、一部の偏った思想を持つ人々によって「この映画はユダヤ人権力の横暴を暴き出している」とか根拠のない解釈がなされており、ついにジョン・カーペンター監督も「『ゼイリブ』はヤッピーと、暴走する資本主義について描かれた作品です。 ユダヤ人による世界の支配とは関係がありません。それは中傷的かつ嘘です」とツイートしたそうです。
まあ、ほんわかジブリ映画『となりのトトロ(1988)』にさえ、おどろおどろしい都市伝説があるくらいなので、気持ち悪いエイリアンを用いた風刺的作品にあらゆる解釈が生まれてしまうのは、仕方がないことなのかもしれません。
なんにせよ、この映画は単純にSFホラーとして観ても、とても面白い作品です。
レジスタンスが活動している場所の管理やセキュリティが甘すぎるとか、完全武装した兵士のエイリアンを、たった2人の肉体労働者が完璧に武器を使いこなし突破してしまうとか、いろいろ突っ込みたいところはありますが、世界観といい、エイリアンのビジュアルといい、よくできています。
ただ、主役のナダを演じているのがプロレスラーでもあるロディ・パイパーさんなので、キース・デイヴィッドさん演じるフランクとの、「サングラスをかけろ!」「いやだ!」「かけろ!」「かけるもんか!」のケンカが長いってなんの。『志村けんのだいじょうぶだぁ』で、「これでもか」とやり込めるコントぐらい長い。
「あー、やっと終わったよ。サッサと物語を進めてくれ」と思ったら、またもやケンカ再開。最終的にはブレーンバスターなどかけているので、「プロレス技見せたいだけなんかーい!」と突っ込んでみたら、やっと終了。まあ、そこまでしつこくケンカしたのは、ナダがどうしてもフランクに理解してほしかったからなのですが。(でも、やっぱりプロレス技も見せたかったんだと思う)
【登場人物と出演者】
ナダは、尋常じゃないほど筋肉隆々で、エイリアンをも恐れない不敵な肉体労働者。仕事を求めやってきた町で、気のいいフランクと出会います。働きながらチャンスを伺っているので、ただ現状を嘆くことはせず、じっくり辺りを観察しています。なんとなく「この世界はどうもおかしい」とは感じていた様子。
ナダを演じるのは、プロレスラーでもあるカナダ出身のロディ・パイパーさん。残念ながら、2015年7月に61歳で亡くなっています。
フランクを演じるのは、数々の映画で活躍しているキース・デイヴィッドさん。この方もかなりガタイがいいので、プロレスラーのパイパーさんと並んでも、格闘していても引けをとりません。こわもてですが、コメディもかなりいけるくちです。ちなみにお下劣コメディの『メリーに首ったけ(1998)』では、メリーのパパ役でした。
ホリーは、エイリアンの存在を知ったナダが、たまたま出会って逃亡に巻き込んだ美女。テレビ局で働くイイ女です。演じたのは、美しすぎる目を持つメグ・フォスターさん。
【結論】
いまも話題が尽きない、カルト的な人気を誇るSFスリラーですが、格闘シーンも伝説になるぐらい長い(しつこい)映画です。ロディ・パイパーさんのブレーンバスターが見たいならぜひ。
ライター中山陽子でした。
ゼイリブ(1988)
監督 ジョン・カーペンター
出演者 ロディ・パイパー/キース・デイヴィッド/メグ・フォスター/ジョージ・フラワー