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CINEMAバリQ

【ビューティフル・デイ】
ホアキン・フェニックスがちょっとデニーロ的なクライムスリラー

汚い大人に感情を奪われた少女――「ビューティフル・デイ」

【あらすじ】

PTSDを患う元軍人のジョーは、ニューヨークで年老いた母と暮らしながら、少し手荒な方法で行方不明の少女たちを捜し出す仕事を請け負っていた。ある日、いかがわしい場所にとらわれている娘のニーナを救出してほしという、ヴォット上院議員からの依頼が舞い込む。ジョーは迷わずその依頼を受けるが、助け出したニーナの感情は既に失われていた。そして、さらに思いがけない事態が起こり……。

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もう信頼できるのはお互いだけ――「ビューティフル・デイ」

【レビュー】

実力派俳優として知られるホアキン・フェニックスさんが、またもやその卓抜した演技力を見せつけた映画です。監督・脚本は、『少年は残酷な弓を射る(2011)』のリン・ラムジーさん。第70回カンヌ国際映画祭では、見事に男優賞と脚本賞をダブル受賞しました。

フェニックスさんが演じるのは、どんな角度から見ても堅気には見えない主人公ジョー。

罪のない少女たちを救えなかった過去がトラウマとなり、PTSDを患ったせいか薬物依存にどっぷりと浸かっています。時折りビニール袋で顔を覆っているのは、過呼吸への対処でしょうか。本来なら、苦悶する元軍人に同情心が芽生えそうなものですが、フェニックスさんの怪演のおかげで、「怪しい」という言葉しか思い浮かびません

精神的に不安定で、約束を重んじなかったヤクの売人をボコボコにしたり、少女を救うためとはいえ躊躇なくバンバン人を殺したりします。

ともすれば、『タクシードライバー(1976)』と『レオン(1994)』のミックスなんて、まとめられてしまいそうな雰囲気。しかし、ナイーブで危険なオジサンを演じさせたらピカイチなホアキンさんの演技力と、ラムジー監督の危うく上質な演出があいまって、極上のクライムスリラーが完成しました。

【登場人物と出演者】

ホアキン・フェニックスさん演じるジョーは、凶暴で危なくて、情緒不安定です。しかし、(罪のない少女たちを救うという)強い信念があり、それに基づいて計画・実行・完遂できる、高い能力があります。なおかつ母親想いで、罪のない人には腰が低く、女性に対して紳士な行動をとります。罪人限定とはいえ基本は殺し屋ですが、愛すべきキャラクターなのです。

ハッとするような美少女、エカテリーナ・サムソノフちゃん演じるニーナは、ヴォット上院議員の誘拐された娘。無垢な少女が“いてはならない”場所に監禁されています。あまりにも過酷な経験は、清らかで可憐な少女を、氷のように冷たく、無反応にしてしまいました。しかし、全く違う観点で無垢なジョーと出会ったことで、彼女に人としての体温が戻り、同時に危険な種子が発芽します。

ジュディス・ロバーツさん演じるジョーの母は、ちょっぴり認知症の気はあるけれど、穏やかに息子と暮らす朗らかな老女。まさか、愛する息子が危険で非合法な仕事をしているとは露知らず。PTSDや薬物依存にも気づいていない様子です。のん気な性格は、時にジョーを笑わせて癒やし、ときにイラっとさせますが、ジョーにとって唯一無二の、最愛の女性であることは間違いありません。

ジョン・ドーマンさん演じるジョン・マクリアリーは、ヴォット上院議員の娘を救う仕事をジョーに斡旋した人物。こわもてだし、社会の裏側に通じているのは確かだし、何やら腹に一物ある印象ですが、ジョーにのん気なことを言ったり、詰めが甘く無防備だったりしたことから、憎めないキャラクターとして印象づきました。

ちなみに、ごっついジョーもマクアリーも、カラフルなお菓子のジェリービーンズが好きらしい(ポップでキュートか)。

【結論】

怪しく凶暴な優しい男と、息を呑むほど可憐で美しく、危険な芽を持つ少女が化学反応を起こします。『タクシードライバー(1976)』でも、『レオン(1994)』でもない。あっけらかんとしたラストシーンが、より作中の狂気と愛を、純粋な関係性を際立たせています。

ライター中山陽子でした。

 

ビューティフル・デイ(2017)

監督 リン・ラムジー
出演者 ホアキン・フェニックス/エカテリーナ・サムソノフ/アレックス・マネット/ジョン・ドーマン

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