【蜘蛛の巣を払う女】
アクションエンターテイメント風味が加わって観やすくなったミレニアム最新作
不可解な出来事の陰に復讐の鬼あり「蜘蛛の巣を払う女」
【あらすじ】
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もはやスパイ映画と化した「蜘蛛の巣を払う女」
【レビュー】
不屈の精神を持つジャーナリストのミカエルと、天才ハッカーのダークヒロイン・リスベットが、果敢に卑劣な犯罪や陰謀へと挑む、北欧ノワールサスペンス『ミレニアム』シリーズの最新作です。
スウェーデンのジャーナリストで作家のスティーグ・ラーソン氏が執筆した『ミレニアム(2009)』三部作の映画化は、本国スウェーデンで大成功を収め、世界的にも有名な作品となりました。
その後、ハリウッドで映画化され2011年に公開。それから7年後の2018年に、アメリカとスウェーデンの合作となる今回の作品が公開されました。
2009年のスウェーデン版も、2011年のハリウッド版も、女優(ノオミ・ラパス、ルーニー・マーラ)さんの演技に対する評価がものすごく高かったので、最新作(2018)でリスベットを演じたクレア・フォイさんは、かなりのプレッシャーがあったのではないでしょうか。
表情や表現力が乏しく、反骨精神丸出しのパンクスタイルで、強い意志を全身から放つ雰囲気は同じなのですが、ノオミ・ラパスさんやルーニー・マーラさんほどの強烈なインパクトは、正直なところクレア・フォイさんにはありませんでした。2人の突き刺すようなオーラとは違い、フォイさんの出すオーラは、何というか親しみやすいのです。
リスベットが暴力男に制裁を加えるときに施す、独特なメイクが一瞬それを消し去っても、すぐに柔らかい雰囲気がジンワリ染みだしてきます。すると、どうやら今回は、“いかにもリスベット”という役者さんを避けた経緯があるのだそう。
いずれにせよ、今回の作品はシリーズの特徴である陰鬱な雰囲気に加え、スパイ映画的な要素や、少し派手目のアクション、リスベットらしからぬチームワークの要素が組み込まれているので、むしろその方が良かったのかもしれません。
『ミレニアム』シリーズの知識は入れつつ、別物の作品として観れば、個性的な娯楽映画として楽しめるはずです。
【登場人物と出演者】
クレア・フォイさん演じるリスベット・サランデルは、ドラゴンとスズメバチのタトゥーを体に持つフリーの調査員で、天才ハッカー。表情が乏しく格好も奇抜で、時として残酷だが、正義を行う意思と情がある。そして恐らく、どんなエージェントにも負けない能力があり、世界最強のツンデレさん、じゃなくてツンモジさん(別作品で、ミカエルに対してのみ無表情のままモジモジしていた)。心の奥底ではミカエルが好き。現実は友達以上~恋人未満(過去に肉体関係がある背景)。
スヴェリル・グドナソンさん演じるミカエル・ブルムクヴィストは、雑誌『ミレニアム』のジャーナリスト。どんなに危険だろうと決して悪を見逃さず、放置もしない。相変わらず人妻と不倫しているし、トラブルを引き連れ生きるリスベットに好意を持っているので、穏やかな人生は到底望めそうにない。リスベットが今までにない、初めての感情を抱いた男性でもある。
ラキース・スタンフィールドさん演じるエドウィン・ニーダムは、リスベットを追うNSAのスペシャリスト(スペシャリストってなんだ?)。敵なのか味方なのか、最後の最後までハッキリしない微妙な立場だが、敏腕なスペシャリストであることには違いない。ラキース・スタンフィールドさんが、登場した途端に「あんた、いい人だね」と思えてしまう問題は検討の余地あり。
シルヴィア・フークスさん演じるカミラ・サランデルは、16年前に生き別れたリスベットの双子の妹。『鑑定士と顔のない依頼人 (2013)』でミステリアスな女性をエロティックに演じ、SF映画『ブレードランナー 2049(2017)』で冷酷極まりないレプリカントを演じたフークスさんが、眉毛まで金髪の極悪非道かつ傷ついた女性を演じているもんだから、さすがにインパクト大。
【結論】
前作のハリウッド版を担ったデヴィッド・フィンチャー氏に代わり、今回の作品でメガホンをとったのは、夢に出てきそうなほど恐ろしいジイサマが登場する『ドント・ブリーズ(2016)』で好評を得たフェデ・アルバレスさん。作品の雰囲気はだいぶ変わりましたが、リスベットの活躍が拝めるクライムアクションエンターテイメントとして、大いに楽しめる作品です。(前髪はもう少し長くていいと思うけど)
ライター中山陽子でした。
蜘蛛の巣を払う女(2018)
監督 フェデ・アルバレス
出演者 クレア・フォイ/スヴェリル・グドナソン/ラキース・スタンフィールド/ールド