【ザ・フォーリナー 復讐者】
いつもと違うジャッキーと、裏がありそうな007のサスペンスアクション
家族を奪われた男の静かで激しい闘い「ザ・フォーリナー 復讐者」
【あらすじ】
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老けメイクで陽気なジャッキー封印「ザ・フォーリナー 復讐者」
【レビュー】
今回の映画のように、孤独と喪失感でボロボロになった、笑顔のない老人を演じるジャッキー・チェンさんのシリアスな演技は、なかなか見れるものでありません。しかも共演は5代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナンさん。
そして、メガホンをとるのは『007 ゴールデンアイ(1995)』や『007 カジノ・ロワイヤル(2006)』などの監督を担ったマーティン・キャンベルさんです。
こうした概要だけでも、非常に見応えあるサスペンスアクションであることが容易に想像できるのではないでしょうか。実のところ、鑑賞後もその印象は大きく変わりません。
最初こそ、ジャッキーさんの“老けメイク”と“ヨボヨボ歩き”について、「ちょっとやり過ぎじゃなか」と感じましたが、結果的にそれが、孤独で冷徹な復讐者としてのシリアスな演技をより引き立てていたような気がします。
最後までジャッキースマイルは見れませんが、数回ほど「いつものコミカルなジャッキー」が、アクションのなかに見え隠れしますよ。
あと、何といっても興味深いのは、鑑賞者(筆者)が「いつもと違うヨボヨボのジャッキーさん」を見ていても不安にならないこと。「いつものコミカルなジャッキーさん映画」を通じてその「しなやかな強さ」を認識しているため、「こいつらジャッキーの強さを知らないな」と自信たっぷりに構えてしまうのです。
そうした期待感が大きいだけに、ジャッキーさん演じる年老いた主人公が悲惨なまま幕を閉じてしまったら、立ち直れなくなってしまう危険性もはらんでいる、ともいえます。
【登場人物と出演者】
ジャッキー・チェンさん演じるクァン・ノク・ミンは、最愛の娘を失った絶望のなか、冷たい復讐の炎を燃えたぎらせた元特殊部隊員。ほーんとに、どこにでもありそうな設定の映画ですが、ジャッキーさんが「笑わない男」をここまでまっとうした映画は珍しいので一見の価値ありです。元特殊部隊員的アクションのなかに、時どきコミカルなアクションが見え隠れしているのでお見逃しなく。
ピアース・ブロスナンさん演じるリーアム・ヘネシーは、北アイルランド副首相で、元過激派組織活動家です。巻き込まれているのか、悪者なのか、よくわからないまま物語は進みますが、どっちに転んでもクァンは容赦しません。いずれにせよ、汚れ役を買って出るブロスナンさんには敬意を表したくなります。
ちなみに過激派組織について、日本版字幕では「UDI」という架空の表記になっていますが、英語版では「IRA」と表記されるため、つまりその組織を指しています。
オーラ・ブラディさん演じるヘアリー・ヘネシーはリアムの妻です。本来はとても美しい人ですが、怒って(たまに泣いて)ばかりいる魅力に欠けたキャラクターです。しかも、その本質は見た目以上に過激だったりなんかしたりして。
レイ・フィアロンさん演じるリチャード・ブロムリーは、ロンドン警視庁テロ対策指令部指揮官。温厚で思慮深いけれど、ケジメはキッチリつける、信頼のおける男です。ドラゴンうんぬん言う最後のセリフはちょっとクサかったけど、嫌いじゃないっす。
チャーリー・マーフィさん演じるマギーはリアムの愛人。おいちゃんが夢中になるだけあって、若くてやわらかそうな“いい女”ですが、何やら違う側面が……。
【結論】
1992年のスティーブン・レザーの小説『チャイナマン』(新潮文庫)を原作としている、この映画は、いつもと違うジャッキー・チェンさんを最後まで安心して観れるサスペンスアクションです。個人的には、ロンドン警視庁テロ対策指令部の容赦ない感じも好きでした(どいつもこいつもハニートラップに引っかかているだけに)。
ちなみに、クァンの店で働く従業員を中国人女優の劉涛(リウ・タオ)さんが“疲れメイク”を施し演じていましたが、美形っぷりは全く隠せていません。
ライター中山陽子でした。
ザ・フォーリナー 復讐者(2017)
監督 マーティン・キャンベル
出演者 ジャッキー・チェン/ピアース・ブロスナン/オーラ・ブラディ/レイ・フィアロン