【イコライザー1. 2. 3】 マッコールさんが世の悪を成敗する映画
※ネタバレあり
助けたがりの秒殺マシーン
【あらすじ】
気さくで真面目なおじさんとして普通に暮らす一方で、善を守り悪を抹消する、イコライザー(等しくするもの)としても活動するようになる。
しかし、あるときマッコールらしからぬミスを犯してしまったとき――彼は初めて “平和な人々のなかにいる自分” を想像した。
デンゼルさんのハマリ役がついにファイナル
【レビュー】※ネタバレします!
● ロバート・マッコールという男
近所や、同じ会社にいる、ごく普通の真面目で物静かなおじさんが、じつは元海兵隊員で、国防情報局(DIA)だか中央情報局(CIA)だかの元特殊工作員で、悪者をやっつけるという、いかにもありがちな物語なんですが――これはスカッとくるだけでなく、ズッシリと心に響く映画でもあります。
その理由を述べるとすれば、演じた俳優さんの演技がよかった、の一言に尽きるかもしれません。ロバート・マッコールには、元工作員キャラにありがちな「オプションとしてくっつけたみたいな哀愁」ではなく、「その人物と一体化した哀愁」が染み込んでいるのです。
つまり、実在の人に見えるほどリアルということ。我が家ではもはやデンゼル・ワシントンさんを、マッコールさんと呼んでいます。たとえば、「あの映画には若いころのマッコールさんが出演しているよ」的な感じで。
『イコライザー THE FINAL(2023)』でマッコールは自分のことを、「(いい人間か悪い人間か、どちらなのか)わからない」と言います。映画のなかでは善人が、この答えをいい方向でとらえ、マッコールさんの心を癒していますが、じつのところマッコールさんは悪人に対し非常に冷酷なので、普通の善人にはない感覚をもっています。
たとえ相手が極悪人でも、その命が尽きるのを確かめようと、目の色を最後まで淡々と凝視することなんて、普通の人にはできないでしょう。したがってマッコールさんは、善を守る使命感に燃えた、ボランティア精神旺盛な処刑人なんです。
● デンゼル・ワシントンという俳優
前項で、唯一無二のオスカー俳優デンゼル・ワシントンさんが演じたからこそ、この映画に大きな価値が生まれたことについて述べました。
その部分をもっと掘り下げ、分解して、代表格を挙げるとすれば、それは同氏の “目” です。じつはこれ、ブルース・リー師匠にも共通する部分があるのです。
そんなことを言ったら、ブルース・リーファンが怒るかもしれませんが、筆者も師匠の大ファンであり、実の兄が若いころブルース・リー師匠にマジそっくりだったので、どうかお許しいただきたい。
ちなみに、その共通する部分とは、目の色に表れる “哀愁、哀れみ、冷たい炎、わずかな狂気、威圧感” です。その目の色が好きであるゆえ、マッコールさんが大好きになったわけですが、この感覚を得て同氏のほかの映画も観てみると、たしかにどの映画でもデンゼルさんは、この目の色を垣間見せています。
しかし、その目の持ち主であることを気づかせてくれたのは、映画『イコライザー』シリーズにほかなりません。アントワーン・フークア監督には、感謝しきりです。
ただ、『イコライザー THE FINAL(2023)』で見せたその目は、少し色味が違っていました。デンゼルさんももうすぐ70歳。「さすがに歳を重ねたよなー」と最初は思いましたが――今回はイコライザーが永住の地を求めるという意外な展開です。その演技のために、目の色も変えていたとしたら、もうあっぱれデンゼルさん、としか言いようがないでしょう。
● 音楽
哀愁を帯びた1、2の音楽(たとえば1では、マッコールさんが勤務先のホームセンターへの出勤準備をしたり、通勤電車に揺られていたりするシーンで流れていた)は好きでしたが、THE FINALではアクションシーンのうるさいブザー的な音楽がいまひとつで、好きだった哀愁たっぷりの音楽もあまり聞こえてこなかったので、少し残念でした。
● 追記
「もう3でこのシリーズは限界っしょ?」「もうアクションなんて無理っしょ?」といった感じで、デンゼルさんとフークア監督が手打ちしたのはなんとなくわかるけど、本当にファイナル? マッコールさんが師匠としてがっつり登場し、マイケル・B・ジョーダン氏あたりの若手が、現役イコライザーとして、再び悪を成敗してくれると嬉しいかな?
(ライター中山陽子)
イコライザー(2014)
イコライザー2(2018)
イコライザー THE FINAL(2023)
監督 アントワーン・フークア
出演者 デンゼル・ワシントン