【FRINGE/フリンジ】科学で解決できないことを科学でこじらせるドラマ ※ネタバレあり
「普通じゃない科学と事件が日常です」byフリンジ・チーム
【あらすじ】
そこで彼女は、“アインシュタインの後継者”と呼ばれるフリンジ・サイエンスの天才科学者ウォルター・ビショップ博士と、やはり天才領域のIQをもつその息子ピーターに協力を仰ぐ。
最初は距離を置いていた彼らも、次第に家族のような関係性をもつようになるが、彼らに心穏やかな休息日は訪れない。事件は次第に並行世界や、さらなる未知の領域へと広がっていく。
そのなかで明かされていくオリビア・ダナム捜査官、ウォルター・ビショップ博士、そしてピーターの秘密は、驚くべきものだった。
科学の常識を超えたその先へ――フリンジ・チームの奇妙な日常と素敵な仲間たち
【レビュー】※ネタバレします!
● 科学とフィクションの絶妙なバランス
『FRINGE/フリンジ』は、食べた途端に「うまい!」と言ってしまうグルメリポーターのごとく、聞くだけで「壮大だ!」と言ってしまいたくなるドラマです。なぜならJ.J.エイブラムスさんが企画・製作総指揮をつとめているから。
放送期間は2008年から2013年までと、かなり前のアメリカSFテレビドラマですが、いまさらながら筆者は一気見して、世界中にいると思われる熱狂的な『FRINGE/フリンジ』ファンの仲間入りをしました。
科学的なテーマとフィクションが見事に融合しているこの作品は、スタッフがワクワクしながらつくっただけに(オリビア・ダナム役のアナ・トーヴさんがそんなことを言っていたと思う)、本当に面白くできている。
タンパク質を活性化させる毒で人間の穴という穴を皮膚が覆ってしまい窒息させるとか、「キズパワーパッド的な攻撃をする毒も、確かにありそうだよね」と思わせてしまうのがすごい。
また、クローン技術やテレポーテーション(量子の世界ではテレポーテーションの実験が成功したらしい)といった現実の科学に基づいたテーマもあり、視聴者に「もしこれが現実だったら?」と思わせる力をもっています。
難解な科学用語もありますが、キャラクターたちの会話にしっかりと溶け込んでいるので、説明しすぎる鬱陶しさはなし。科学、境界科学が自然なかたちでストーリーを補完している、SFファンにはたまらない魅力的なドラマなのです。
● キャラクターの深みと魅力
魅力と言えば、『FRINGE/フリンジ』のもう一つの大きな魅力は、個性豊かなキャラクターたちです。主人公オリビアの強い正義感と、ウォルターの風変わりな性格、ミステリアスなピーターと、かわいいアストリッド(優秀なFBI捜査官なのにウォルターの雑用係状態)の現在と過去がそれぞれに絡み合い、物語を深く彩ります。
じつはもともと、ジョン・スコット役のマーク・バレーさん目当てでこのドラマを観始めた筆者。途中で彼が退散させられ、「眉間にシワ寄せ顔」と「にやつき顔」の往復が多いジョシュア・ジャクソンさん演じるピーターが主要人物として居座っていることに抗議しようかと思っていましたが、早々に彼のファンになり、ハッキリ言って夢中になりました。ハイ。
そして何より、ウォルターの繊細でユーモラスな性格は、誰しもとりこになったのではないでしょうか。研究に没頭すると周囲が見えなくなり、未確認生命体を解剖中でも食欲モリモリです。また、「これオムレツ?」的な感じで息子のピーターが食べようとしたら、そのなかで「耳」だか何かを培養していたこともあったと思う。
「そんな父親はイヤだー」のお笑いネタになりそうですが、何をしてもウォルター博士は憎めないキャラクターなのです。
● 『FRINGE/フリンジ』が織りなす新たな視点
また、本作の核心ともいえる並行世界の存在や、感情を邪魔なものとして進化した未来型人間の存在は、物語のスケールを飛躍的に拡大させます。
それは物理的な意味ではありません。
つまり、『FRINGE/フリンジ』が織りなす新たな視点は、人間の選択や、運命に対する深い問いを投げかけてくれるのです。(と、最後はちょっとかっこつけてみました)
● 追記
「我思う、ゆえに我あり」と、フランスの哲学者ルネ・デカルトは説いた。自分が何かを考えているという事実が、自分の存在を証明しているということかもしれないが、並行世界では、おんなじ顔をした自分が、自分じゃないと、どう説明すればいいんだ。心配だわー。
(ライター中山陽子)
『FRINGE/フリンジ』
企画 J・J・エイブラムス , アレックス・カーツマン , ロベルト・オーチー
出演者 アナ・トーヴ , ジョン・ノーブル , ジョシュア・ジャクソン