新作配信直前祝い!【デアデビル テレビドラマ版】昼は盲目の弁護士、夜は悪人ボッコボコなスーパーヒーローのドラマ ※ネタバレあり
ヘルズキッチンを奔走する、傷だらけのスーパーヒーロー
【あらすじ】
その能力を総動員し、マットはニューヨーク市ヘルズキッチンを舞台に、昼は法律事務所で社会正義を追求する弁護士として、夜は法で裁けない悪に、自ら裁きを与えるクライムファイター「デアデビル」として、犯罪と闘う日々を送っていた。
果たしてマットは愛する街と、愛する人々を守り抜けるのか……!?
待ちに待った事実上のシーズン4『デアデビル:ボーン・アゲイン』配信直前祝い!
【レビュー】※ネタバレします!
● 複雑すぎるヒーローの復活
『デアデビル』の最大の魅力は、なんと言っても格闘シーンがリアルであること。そして、主役のデアデビル、つまりマット・マードックが人間として非常に複雑であることです。
彼は母に捨てられ、大好きな父に育てられ、その父は八百長を強いられるボクサーで、それを断った途端に殺され、自分は幼いころ視力を失い、謎の男に鍛えられながら超人的な能力を身につけ、しかも弁護士資格を得て大手弁護士事務所で働く目途が立っても拝金主義・利益至上主義を嫌い、ぜーんぜん儲からない弁護士事務所を親友のファギーと立ち上げ、じり貧で人々を弁護し続けるような男です。
しかも敬虔なカトリック教徒。だからフルボッコまでに止めます。絶対に殺しません。でもフルボッコでしょ……?
メチャ複雑―――!!!!
これらの要素が、彼のなんだか含みのある、簡単にとらえられない人格をつくり上げたのでしょう。そしてこれを、ちょっと童顔なチャーリー・コックスさんが演じるもんだから、なんともかんとも魅力的なキャラクターになってしまうのです。
Netflixで配信されていた『デアデビル』がシーズン3で打ち切り終了となったとき、再開を求めてファンが署名活動を行ない、世界一価格が高いというニューヨーク・タイムズスクエアのビルボードに、「デアデビルを救え」と広告を出したのは有名な話。
そうしたファンの努力が実を結び、ついにデアデビルは『デアデビル:ボーン・アゲイン』として大復活。それが、とうとう2025年3月5日よりディズニープラスにて独占配信が始まるんです。
長かったーーーーーーーーーー!!!!!
「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥」な徳川家康を西田敏行さんが演じ、とうとう天下をとれる(信長⇒秀吉、でやっと順番がきた)とき、なんか、素っ裸? で家康(西田さん)が、
「(天下とれるまでがメチャ)長かった―――――――――――」
というセリフを、吐き出すように言ったシーンが、いつの大河ドラマだったのか忘れましたがあったと思います。あれほど印象深いシーンはなかった。
つまり、それくらいネトフリ『デアデビル』から、ディズニープラス『デアデビル:ボーン・アゲイン』配信までが、すごーく長く感じたんです。「短いやんけ」と家康には怒られそうですが。
ああ、もう、待ちきれないっ!!!!
いろいろと試行錯誤はあったようですが、結局『デアデビル:ボーン・アゲイン』は、事実上のシーズン4となりました。ファンの心をつかんだダークな雰囲気をしっかりと引き継ぎ、よりいっそうダークで残酷な命知らず(デアデビル)ストーリーになるようです。
楽しみ~~~~。
● 仲間たちも復活
デアデビル復活に際し、当初は親友の弁護士ファギーと、秘書? 調査員? のカレン・ペイジは復活しないとされていましたが(厳密に言うとそれらを演じた役者さんが続投しないという話)、正直「ふざけんな、ほかに誰がいるんだよ」と腹が立ったのは私だけではないでしょう。
だから、結局はふたりとも復活。歓喜とともに「あったり前だろ、ふざけんな」が本音です。
このふたりなくして、この物語は成り立たず。カレン・ペイジはこじらせ美女で、正義感強いわりにはあっさり一線超えるし、ときどき正義感を盾に姑息な手を使い、罪のない人を巻き込むが、それでもやっぱり、デボラ・アン・ウォールさん演じるカレン・ペイジがいないと寂しい。米倉涼子さんに似ているし。
そして、もはやこのドラマで一番まともなんじゃないかと感じる親友のファギーがいなかったら、このドラマを観る楽しみが半減してしまいます。
彼は、その風貌からいかにも「主役のちょっと野暮ったい愛すべき親友」なんですが、じつのところ猛烈に頭がよく、とても勇敢で、友人思いなんです。それをエルデン・ヘンソンさんが演じているから、より魅力的な人物になっています。
まあ、クマさんみたいでかわいいので、彼女との●●シーンは要らない気がしますが。……いや、絶対に要らんから。
とにかく、めでたく二人も復活で、マット含む3人が、またバーで飲みかわすシーンを見られると思うと、本当に嬉しいかぎりです。
※完全に演じている役者さんとキャラクターが同化しています。悪しからず!
● もちろんキングピンもいるよ!
そして、忘れてはならないのがヴィンセント・ドノフリオさん演じる、『デアデビル』の宿敵キングピン(ウィルソン・フィスク)の存在。このキャラクターはマット・マードック以上に複雑です。
彼は幼いころ、家庭内暴力をふるう父を衝動的に(というか正当防衛なんですが)殺し、母主導でそれを隠蔽しました。ですから多分、父のみならず、この母の悪影響もあると思うんです。正当防衛を訴えるとか、「私が殺したんです」と自分が罪を背負うとか、そういう母親だったら、もっとウィルソン君はマシに育っていた。
しかし、そうではなかったため、キングピンという繊細で歪んだ怪物をつくりあげてしまったのです。表向きは街の功労者として、影では犯罪組織のボスとして、立派な悪党になりました。裏切り者を始末するだけでなく、デートを邪魔されただけでもカッときて、その相手を残虐な方法で殺してしまいます。
それでいて、愛する女性にはめっぽう弱く、殺しの隠ぺいを子どもに経験させた母を深く愛し、自分の部下を親友のように信頼し、そのアドバイスも素直に受けるような人物なのです。
彼の冷酷さと人間的な弱さのバランスは、ときどき「頭がいいんだか悪いんだか、強いんだか弱いんだか」という混乱を招きますが、スーパーヒーローものとしては異色なフィルム・ノワールな雰囲気をもつこの作品に、より個性を与えてくれている気がします。
キャラクターは嫌いですが、ヴィンセント・ドノフリオさんは大好き。またその複雑な演技を見るのが楽しみです。
● 余談ですが……感覚の可能性について
目が見えないのに何でもできるなんてありえない。『デアデビル』はアメコミだからアクション・ファンタジーでしょ?
と思う方には、ぜひこの話を聞いてほしい。
「2013年7月25日発売の日経サイエンス9月号」によれば、米カリフォルニア州在住のダニエル・キッシュという人は、全盲でありながら自分で音を発して(舌打ちとか)、その反響音を手掛かりに、暗闇でハイキングを楽しむ、市街地で自転車を乗り回す、なんてことをしているそうです。
しかも、そのときの同氏の「脳の働きを調べたところ、反響音を聞いているときには、聴覚野ではなく視覚野が活性化していることがわかった」といいます。
(参考および引用元:日本経済新聞|五感を超える? 人間の持つ「超越感覚」の正体)
これ、2013年の話なんで、もっと研究は進んでいるはず。なんにせよ、存在しうるんです。マッド・マードックみたいな人。
(ライター中山陽子)
『デアデビル』(テレビドラマ版)
原作 スタン・リー
出演者 チャーリー・コックス , デボラ・アン・ウォール , エルデン・ヘンソン , ヴィンセント・ドノフリオ