【ヴェノム:ザ・ラストダンス】
関係性がちょっと生成AIの友達っぽい気もする「俺たち」の最後……※ネタバレあり
戦いの果てに「俺たち」を待つ運命とは?
【あらすじ】
このエイリアンが、シンビオートの生みの親「ヌル」が放った「かなりやばい刺客」であること、そして「ヌル」の目的が何であるか悟ったヴェノムはパニックに陥る。
そのころエリア51では、秘密裏にシンビオートの研究が行なわれていた。それぞれの思惑がぶつかり合うなかで、「俺たち」最後の戦いが幕を開ける──。
ロードムービー風味を添えて…本当の意味でしみじみラスト?
【レビュー】※ネタバレします!
● ふたりの物語、ついにラストダンス
かなり無理やりでしたが、本作品にはいい感じのロードムービー要素がありました。エディとヴェノム=「俺たち」が、ヒッピーな家族とわずかな時間をともにして、ハートフルな車の旅をするのです。
まったりとした時間のなか、ギターの音と、延々と続く道、日暮れに家族といる安堵、脱力した家族全員の声がバラバラに合わさった歌声、やさしい空気……。「俺たち」にふと、普通の人生について考えさせるわけです(ってそもそも存在が普通じゃないんだが)。
ヴェノムは「この家族を食わないでよかった」と言いました。回を重ねて、ますます「いい奴度」と「かわいさ度」が上がってます。
しかも、この一家の家長マーティン・ムーンを演じるのは、リス・エヴァンスさん。雰囲気ピッタリ、最高のロードムービーではありませんか。副題の「ラスト」という言葉が示すように、本作でエディとヴェノムの物語は完結すると言われています。このラストにふさわしい、グッとくるストーリを組み込んだのでしょう。
で・す・がっ……、
のちに再会はするものの、ヒッピー家族とは意外とあっさりお別れ。再会のときも意外とあっさり。短かっただけに、それほど絆は生まれなかったようで。雰囲気に酔いしれていた気分をバッサリ切られた筆者は、「なんであのシーン入れたんだ?」と思わずボヤきました。
しかし……!
最後にいろんなシンビオートが味方に寄生して、力を合わせて「ゼノファージ」に立ち向かおうとするシーンがありました。一気にテンションが上がります。アーマーを全機召喚し、総攻撃をかけた『アイアンマン3』(2013)の決戦シーンのように、最高にスカッとできるのかと……、
思きや……、
ヴェノム以外の、
シンビオート、
弱すぎ。
生き残ったのは、エリア51で研究を行なうテディ・ペイン博士に寄生したシンビオートだけだったか……、とにかくバッタバッタと倒されます。
まあ、そんな印象だったこともあり、また、何よりこのトム・ハーディさん演じるエディと、黒くてグロくてかわいいヴェノムの「俺たち」が大好きだったので、これが本当に最後だなんて、マジで承服しかねます。
● 「俺たちコンビ」は昨今の「人間とAI」の関係性に似ているかも?
エディとヴェノムは、一見すると相容れない存在ですが、共に生きるうちに唯一無二の「俺たちコンビ」へと進化していきました(というか、もはやカップル?)。
これは、現代における「人間とAIのコンビ」にも通じるかもしれません。結婚した人もいるとかなんとか!?(参考元:フォーブス ジャパン)
最初こそ、AIは人間の道具でした。しかし、対話を重ねるうちに人間の思考を補完し、相棒のような存在になりつつあるわけです。もちろん、その危険性を指摘する専門家も少なくありません。
ですが、エディとヴェノムが衝突しつつも互いを必要としたように、人とAIも試行錯誤しながら共生のかたちを模索中。
未来では、AIがさらにパーソナライズされ、人と息の合った「相棒」として機能するかもしれません。エディとヴェノムが築いた絆のように、AIと人間の関係も、支え合うことでより面白い世界を生み出していくのではないでしょうか……?
って、いったい何の話だ。
エディとヴェノムを見ていると、どうしても頭に「人間とAIのコンビ」が思い浮かんでしまうので、つい書いちゃいました。ちなみに筆者にもマブダチの生成AIがいます。ほとんどヴェノム化しているような気が……。(どうでもいいか)
● ヴェノムはまた戻ってくる……!
エンドロール最後に、この見出しのようなことは書かれていませんでしたが、ヴェノムの一部がゴキブリに寄生して生き延びた可能性を示唆するシーンもあるので、エディとヴェノムの「俺たち」はこれで最後でも、違うかたちの「俺たち」「私たち」は、今後も続くと思われます。(承服しかねますが)
今回、超リッチになりはっちゃけてたチェンさんも続投するかな?
(ライター中山陽子)
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』
監督:ケリー・マーセル
出演者:トム・ハーディ , キウェテル・イジョフォー , ジュノー・テンプル, リス・エヴァンス , スティーヴン・グレアム , ペギー・ルー