【ウインド・リバー】
ジェレミー・レナー史上最高の演技と “かっこよさ” かも? ※ネタバレあり
『ウインド・リバー』あらすじ
その広大な土地で活動する警察官はたったの6人。凶悪犯罪が起きた場合はFBIが捜査を行なうことになる。単身派遣された新人FBI捜査官ジェーン・バナーは、慣れない土地での捜査に難航。そこで、地元の事情に詳しいコリーに協力を求める。
やがて――厳しい冬に閉ざされた場所で起きた2つの凶悪事件は、あるひとつの場所へとつながる。そこで事件は急展開を迎えた。
『ウインド・リバー』レビュー※ネタバレします!
ホークアイとウィッチだけど、極めて重厚で衝撃的な社会派サスペンス
この作品は、『アベンジャーズ』のホークアイ役ジェレミー・レナーさんと、スカーレット・ウィッチ役エリザベス・オルセンさん共演の犯罪サスペンス映画です。しかし、マーベルファンがふたりの競演を喜んで観ようものなら、そのあまりに悲痛な物語に圧倒されることになるでしょう。
なぜなら、この作品の根底にあるのは先住民女性の失踪・暴力問題――いわゆる「MMIW(Missing and Murdered Indigenous Women:失踪・殺害された先住民女性)」問題だから。アメリカでは長年にわたり深刻な社会問題となっており、統計管理や捜査体制の不備が被害の拡大を招いていると指摘されています。
よって、この映画は、よくも悪くも感情を思いっきり揺さぶられる、どっしりと重い作品です。
罪のない人が被害に遭うプロセスと、その描写はかなりの胸糞もの。どうしようもない憎しみがムクムクと湧いてきて、「こいつらマジでぶっ〇〇す」と思いながら鑑賞しました。
しかし、この映画はそうした観客総出の怒りを、青い空と白い静寂な世界のなかに、整えてしまいます。
犯人を追い詰めた晴天の雪山シーンは、このうえなく静かで完璧な制裁
この映画で主人公のコリーは、強い痛みを抱えながらも終始冷静でした。彼にとって心の痛みは、ある意味「最愛の人との共存の証」でもあるからです。
冷静で、穏やかで、配慮がある。それでいてハンターらしく、仕留めることに一切の迷いがない。観客の怒りを一切合切引き受けても、そんな彼が行なった制裁は完璧すぎるものでした。威嚇したり、怒鳴り散らしたりしないのに、雪山を背負って犯人に語りかける主人公には、圧倒的な強さがありました。
もはや人間ではない “地球のゴミ” には、ただ厳しい自然の力を少し借り、裸足で走らせればいいだけです。
それだけで、彼(コリー)の私刑は完璧なものにりました。
・痛みを抱え続ける覚悟
・怒りを静かに整える姿勢
・均衡を取り戻す冷静さ(イコライザー?😳)
そんな主人公の姿に、ただただ「参りました」といいたくなるような、圧巻の雪山シーンでした。
理不尽で不公平な世界で散った「美しい戦士」
映画の冒頭で、被害者の少女ナタリーは、裸足で極寒の雪山を逃げ続けました。極限状態のなか、肺が凍りついて破裂するほどの冷気を吸い込みながらも、彼女は生き延びるために約6マイル(約10キロ)もの距離を走り続けたのです。そして最後は、肺で出血した自らの血で溺れるようにして亡くなりました。
――このシーンは、最後まで語られた彼女の “強さ” です。
実際のところ、氷点下30度で10キロもの距離を猛ダッシュすることは不可能なはず。しかし、この出来事は、どうしてもこの映画に必要でした。
なぜならナタリーは、罪なきMMIWの象徴だから。理不尽で不公平な世界で、気高く、美しく、そして強く生きようとした彼女を描く必要があったのです。
彼女をレイプして、恋人を殴り殺し、結果として彼女を死に追いやったクソ野郎は、少し走っただけでもすぐに息絶えました。この対比を、どうしても作中で見せる必要があったということです。
コリーは傷を負い病床にいたジェーンに言いました。
「彼女(ナタリー)は戦士だった」
ナタリーの死を悼む以上に、コリーは彼女の不屈の精神を称えます。そして最愛の娘を失った親友のために、愛する娘を過去に失った自分のために、犯人を同じ過酷な環境で自滅させることで、コリーの復讐は完結しました。
当然のことながら、親友の痛みも、コリーの痛みも、一生消えることはありませんが……。
「ぶっ飛ばしている」に近い銃撃シーン
少し話しを戻します。
FBI捜査官ジェーン・バナーが “犯人のいる場所” に近づいたとき、いったん回想に移り事件の真相が明らかになります。そのあとすぐに激しい銃撃戦が勃発。突然の攻撃だったので、ジェーンとその仲間(部族警察のおじいちゃんと保安官ら?)はすぐ壊滅状態に。
そこにホークアイ――
じゃなくて、コリーがライフル銃を手に登場。とてつもない威力をもつ銃のようで、撃たれた犯人は尋常ではない倒され方をします。部族警察のおじいちゃんらの無事を祈りながら(ジェーンはなんとか無事)、その、もはや犯人を「ぶっ飛ばしている」に近い銃撃シーンに、見ているこちらもアドレナリン放出。
もしかしたら先に、この「ぶっ飛ばし」ライフル銃の制裁があったからこそ、最後の雪山の静かな制裁が、よりいっそう整えている印象になったのかもしれませんね……。
猛烈に胸糞が悪いシーンもありますが、ジェレミー・レナーさんファンなら絶対に観るべき映画です。
(ライターgatto)
『ウインド・リバー』(2017)
監督:テイラー・シェリダン
出演者:ジェレミー・レナー , エリザベス・オルセン , ジョン・バーンサル , グラハム・グリーン , ジル・バーミンガム


