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CINEMAバリQ

【サイレントナイト】
ジョン・ウー監督作品・声を失った父が挑む、最も静かな復讐劇 ※ネタバレあり

サイレントなのは声だけ。心は轟音のように吠えている物語

【あらすじ】

クリスマスイブの日、笑顔あふれる家族との団らんは一瞬にして地獄絵図へと変わった。ギャング同士の抗争に巻き込まれた男は、目の前で最愛の息子の命を奪われ、自分自身も喉を撃ち抜かれ声を失う。二度と言葉を発することができなくなった父親に残されたのは、底知れぬ悲しみと燃えたぎる怒りだけだった。

やがて悲嘆は復讐心へと姿を変え、男は来たるクリスマスイブを「復讐の日」と心に刻む――カレンダーに書かれた文字は「全員ぶっ殺す」

静寂に包まれた聖夜、響き渡るのは賛美歌ではなく銃声――声を奪われた男の、孤独で凄絶な復讐劇が始まる。

アクションは最高、けれど残るのは “え? あれ?” という違和感とその余韻

【レビュー】※ネタバレします!

● ジョン・ウー監督に愛を込めて全力ツッコミ宣言

筆者も御多分に漏れず、90年代にジョン・ウーワールドに魅了されたひとり。だからこそこの作品をものすごく楽しみにしていました。

それだけに、私のなかで愛ある突っ込みが炸裂しています。今回は、その独断と偏見に満ちた叫びをそのままご覧ください。

● オープニングで体力削られる観客案件

「クリスマス聖歌」と「声を出せない男」を重ね合わせたこの映画。

待ちに待った、ジョン・ウー監督&『ジョン・ウィック』シリーズの製作陣&イケメン俳優ジョエル・キナマンのケミストリー作品だ。

があああああああ、しかし!

冒頭で「アグリー・クリスマス・セーター」を着こんだ血まみれの主人公が、怒りの形相で取りつかれたように走る。まだ幼い最愛の息子を殺された男だ。

このシーンがやたら長い。

とにかく長い。

オープニングの背景のほとんどをこの走っている映像が占めていたような気がする(あまりにも長すぎて幻覚を起こしたのかも)。

もういい加減にしてくれ。
もういいだろうがあああああああああ。
もうやめろおおおおおおおおおおお!!!

というところで、やっと切り替わる。

とにかくこの映画は “それ” が多い。

● ピヨピヨ無双シーンに脳がバグる

息子を殺された直後、主人公はそのへんで拾った「棒」でギャングを叩きのめそうとするが、当然やられる。

そして、喉を撃ち抜かれ声までも失ってしまう。

その主人公が病室で横たわっているとき、ジョン・ウー監督お得意のハトではなく、謎の鳥(オカメインコに似た小さい子的な)が出てくるんだが、「いったい、え? なに? へ??????」的な感じで微妙な「鳥のいる風景」を挟んだあと、なんか普通にその場面を通り過ぎる。

このシーンを見たとき、なぜか『君よ憤怒の河を渉れ 』(1976年)で、高倉健氏演じる主人公が、大牧場主の遠波善紀(大滝秀治氏)にセスナの操縦を教わっている短いシーンを思い出した。

ハードボイルドでシリアスなシーンしかないはずなのに、お花畑を手前に延々と、「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ」がバックミュージックになっていた謎のシーンだ。

● 妻よごめん、俺はギャング全員ぶっ殺す

えーーー。まあ、それはいいとして。

男は「息子を失い、夫までも失いかけ、それでも健気に生きようとした美しい妻を完全放置」して、復讐の旅を始める。息子の命日であるクリスマスイブに「ギャング全員ぶっ殺す」が最終目的だ。

ここで、一気にラストシーンまで話を飛ばすが――この主人公の身勝手さは、最後の手紙にまで描かれている。

「悪いのは僕だ。二人を愛してる」

ってか、知ってるがな。

いやね、かわいそうだよ。本当に。かわいい盛りの最愛の息子を奪われたんだから。わかっているよ。

でもさ、悲しみのどん底だったとしても、結局お前はギャングと一緒に「健気な妻」までもボコボコにしたんやないけ。

ちゃうんかーーーーーーーーーい。

ジョン・ウー監督作品が観たくて、ジョエル・キナマン氏のイケメンアクションを見たくて、この作品を鑑賞したが、この男の身勝手さは目に余るものがあった。

自分が失敗したら、最愛の妻に「報復の魔の手が及ばないだろうか」とか、考えなかったのかワレ。

● 復讐の鬼が放つ、渾身の肉弾戦

で、話をグッと戻すと……。

最初は弱々しかった男も、観察して調べ抜き、鍛錬し、準備して、復讐の鬼としての完全武装を達成。あとは、ギャングをぶっ殺すだけだ。

ここで、称賛の気持ちがムクムクと湧く。

アクションシーンはさすがのジョン・ウー監督。よくある「いくらなんでも敵が弱すぎねーか案件」は一切なく、本気でケンカが強いギャングが登場(撃たれまくる子分らは別)。

最初に捕まえたギャング(会計担当?)と主人公との格闘は、本当にケンカしているんじゃないかと思うくらい迫力があった。

また、爆発シーン、ガンアクション(やっぱり『ジョン・ウィック』的なガン=フーになっていたよね?)、車を運転しながらのガンファイトも迫力あり。アクションシーンは本当に見ごたえがあった。

● 警察設定が雑すぎてツッコミ炸裂

ちなみに最後、主人公がひとりで戦ったわけではない。あとからスコット・メスカディ氏演じるデカも加わったのだ。

しかし、そのデカは逮捕状もとらず単独行動。百歩譲って「汚職警官を警戒しての行動」もしくは「抗争対応で警官が出払っていた」としよう。

か、しかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーし!!!!!

地域住民を恐怖のズンドコに陥れているギャングの拠点に向かう際に、

なぜ、防弾チョッキを着るという選択をしなかったのだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!

アホなのか?

● 救いはアクション&キナマンがかっこいい💕

まあ、そんなこんなでラストシーン。

子を失い、夫を失ったかわいそうな妻は、夫の身勝手な遺書を見てひとり墓地で涙を流す。

いや、アクションシーンは本当に素晴らしかった。ほぼセリフがないのに持ちこたえたのは、その部分が大きいかもしれない。

が、なんだろう。何か、えーと。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、なんあ違う気がするううううううううううううううううううううううううううう」

そんな言葉が私のなかで渦巻く。

だが救われたのは、 どんなにボロボロでも、むきむきジョエル・キナマン氏がかっこよかった❤

ということである。

(ライターgatto)

サイレントナイト(2022)

監督:ジョン・ウー
出演者:ジョエル・キナマン , スコット・メスカディ , ハロルド・トレス , カタリーナ・サンディノ・モレノ

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