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CINEMAバリQ

【またヴィンセントは襲われる】
フランス発の「不条理サバイバルスリラー」というか、新たな視点のゾンビ映画? ※ネタバレあり

『またヴィンセントは襲われる』あらすじ

ある日を境に、職場のインターン、同僚、見ず知らずの人から襲われ始めたヴィンセント。その数は増える一方だった。希望を失いかけたところで同じ境遇の人間に出会い、頼もしい小さな相棒にも出会い、いくつかの法則にもたどり着いた。また、そのなかで魅力的な女性とも出会うことができたヴィンセントは、生き残りをかけた “ある選択” をするのだった。

『またヴィンセントは襲われる』レビュー※ネタバレします!

● やっぱりフランス映画やないかい!

いきなり周囲の人が、殴るわ、刺すわ、噛むわで、なんとも不憫な主人公。しかし、彼なりに少しずつ武装し、創意工夫をする姿は、なんとなくユーモアがありました。

だからこそ、「制作陣め~。この理不尽な状況をどう転がす気だ!? (≧∇≦)」とワクワクして観ておりましたが――

途中で、「あ、そっか、これフランス映画だった」 と思い出し、“ある種の期待” をあっさり捨てました。

職場の人間、ご近所さん(子ども含む)、見ず知らずの人間、はたまた、町中の人々が大勢で襲ってこようとも、ヴィンセントが特殊部隊並みに鍛えて反撃、あるいは高IQの頭脳を活かして反撃、といった展開にはなりません。

不条理な状況に陥った主人公を、そのまま生煮え状態で置き去りにして、映画を終了させてしまうのがフランス映画というもの。

正直なところ、理不尽に耐え抜いた主人公が大反撃する展開が大好物な単細胞人間なので、こうした生煮え状態は苦手です。

しかし、なぜかこの映画は好きになってしまいました。

● 殺す・殺されるかもしれないけれど「愛している」

あ、こういう曖昧でどっちつかずの見出しを書くと、やっぱり “フランス映画っぽいかも?” という感じですね。笑

この映画では、そうした最後の曖昧な閉じ方が、やけに美しく映りました。ヴィンセントが出会った、ちょっぴりやさぐれ感のある魅力的な女性は、だてにやさぐれているだけでなく、人生経験がとても豊富な印象です。

だからこそ、みんなも自分も無意識に殺したくなってしまうヴィンセントと(自分の手に手錠をかけながら)酒を飲みかわし、ついでカラダも交わしちゃいます😅。

ケセラセラ感ハンパねえ姉さん、という感じ。

しかも、終盤は、ヴィンセントが襲われるだけでなく、襲う側にもなりうる事実が示されました。つまり、このカップルには「常にどちらかが殺そうとするリスクがつきまとう」ということ。

しかし、最後、襲う側に転換したヴィンセントを目隠しして(目を合わせなければ襲わない)、しっかりと抱き合うふたりの姿に、不思議と「愛」を感じてしまいました。

まあ、もうお互いしかいない、一緒に生きていくしかない、という同志のような気持ちもあるのかもしれませんけどね。

とにかく、彼女の家が(都合よく)船だったために、彼らは波に揺られながら、行き先があるような・ないような旅に出たというわけです(シェルターも安全なのか怪しくなってきたしね😱)。

目を合わせられない、恋人と共に――。

● 新たな視点のゾンビ映画?

この映画は「不条理サバイバルスリラー」と表現されていますが、終盤、「いままで襲われていた側も、襲う側になりうる」と示されたときには、ほとんどゾンビ映画の地獄絵図状態になっていました。

ただ、ゾンビ映画では「人がゾンビに噛まれたら感染して、ゾンビとして生き返る」という法則がありますが、この映画の場合は「生き返る」という展開はありません。

しかしながら――

最初のほうは「襲わない人もいる」という余白があったものの、最後のほうは誰もかれも「襲いかかる人」になっています。

映画の序盤でヴィンセントが、「感染?」とネットで検索していましたが、「何らかに感染した」という見方は正しいのかもしれません。

● 現実とどこが違うのか?

映画の要所要所で、何度もニュースを読むアナウンサーらしき人の声が聞こえてきました。「各地で暴力が多発しており――」云々。

こうして見ると、この不条理な映画と、現実とどこが違うのか? と感じてしまいます。「たまたま目が合い因縁をつけられた」というような理不尽な状況は、車が走る道路の上でも、SNS上でも、どこでも存在します。

この映画は、そうした社会的暴力を鋭く風刺しているわけです。「これは映画のなかの話ではない」と気づいたとき、この物語の本当の怖さを私たちは知ることになるはずです。

――

ちなみに、ヴィンセントと同じ状況にある人物が、「襲ってくる人物(殺意を持った人間)を敏感に察知し、知らせてくれるから」と、犬を飼うようすすめてくれました。

そうしてヴィンセントが生活を共にし始めたワンちゃんは、襲ってくる人間に飛び掛かるようなことはしませんが、的確に危険を察知して、常に数秒早い行動をヴィンセントに促してくれます。

調べてみたら、この、かわいい相棒の犬種は「スタッフォードシャー・ブル・テリア」。

一見すると涼しげな眼ですが、アップになると、もう……、とにかくうるんだ瞳がとてつもなく愛らしいのです。やさぐれキュートな彼女ができる前は、この愛らしいワンちゃんが、ヴィンセントの唯一の心強い味方となってくれます。

そんな癒しも味わいながら、不条理な世界観で、社会の暴力的要素を批判的かつ皮肉っぽく眺めてみてはいかがでしょう。

(ライターgatto)

『またヴィンセントは襲われる』(2024)

監督:ステファン・カスタン
出演者:カリム・ルクルー , ヴィマーラ・ボンズ

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