【サブスタンス】
デミさんの怪演には称賛しかない! 美しさとおぞましさがぶつかり合って混ざっちゃう映画 ※ネタバレあり
『サブスタンス』あらすじ
そんな彼女のもとに怪しい誘いが舞い込む。それは、若さと美しさを取り戻し、より完璧な自分を得られるという再生医療だった。一度は無視したものの、人々から浴びせられる数々の辛辣な言動に打ちのめされた彼女は、とうとうその誘いに乗ってしまう。
そうして想像を絶する過酷なプロセスを経て、エリザベスは、スーというあまりにも美しく魅力的な分身としての人生を手に入れる。
だが……それは破滅の始まりだった――。
『サブスタンス』レビュー※ネタバレします!
● 必要以上に完璧を求めたら、元のほうが幸せだった話
美しく輝いていたスターが歳を重ねると、劣化だのなんだの、本当に世の中の「評価」は身勝手でいい加減です。
スターじゃなくても、エイジズム(年齢を理由にした偏見や差別、固定観念)を感じ、不愉快な思いをした人はたくさんいるでしょう。筆者もそのひとりです。
しかしながら――
初っ端に出てきたエアロビ姿のデミ・ムーアさん(エリザベス・スパークル役)は、とても美しいんですよ。ものすごくスタイルがいいですし、動きもキレッキレで、思わず見とれてしまいました。
しかし、そんなに美しい人でも、辛辣な言葉を浴びせられたり、自分が思う完璧な美しさ(たとえば若く “はちきれんばかり” の瑞々しく張りのある若い女性)を目の当たりにしたりすると、自信を失ってしまうものなのです。
そして、そんなときほど、誤った選択をしてしまうのかもしれません。
物語の途中、ありのままのエリザベスを心から「美しい」と褒め称える、人のよさそうな同級生が現れました。あのとき、彼女の目の前には2方向に枝分かれした道があったわけです。救われるか、破滅するか。
この映画は、解釈によっていろんな教訓を得られる作品です。物語の中のエリザベスの場合は、間違いなく「必要以上に完璧さを求めたら、元のままでいたほうが幸せだった」という感じでしょうか。
こう聞くと、「いくつかの教訓を皮肉たっぷりに描いたよくある映画」だと感じられるかもしれません。ところがどっこい、筆者にとっては「構成はよくあるが、いままでに見たことがないほど強烈な映画」でした。
● 構成はよくあるが、いままでに見たことがない部分
ここからさらにネタバレします。
怪しい再生医療を超美青年(彼もその医療の実施者)から暗に紹介され、その世界に突入したエリザベス。該当の “キット” に記された通り実践したところ気を失い、背中が割けて中から超若くて美しく魅力的なスー(マーガレット・クアリー)が登場します😱。
そのように『エイリアン』や『スピーシーズ』シリーズっぽい、グロテスクな本スタートを切ったので、「こんな感じの映画なのか~」とおおかた予想してみましたが、実際にはその想像を遥か2万光年ぐらい超えていました。
スーは分身、エリザベスは母体なので、「より完璧な自分」を維持するには、お互いがなくてはなりません。そもそもこの「ふたり」は「ひとり」ですからね。なので週ごとに入れ替わる必要があるのですが、その都度スーの「かわいさ・エロさ・ずるさ」と、エリザベスの「精神的な負の要素」が増幅していきます。
で――
美しく妖艶な絵と、おぞましい絵が、交互に現れ、最終的には映画『キャリー』 (1976)を彷彿とする――いや、映画史上類を見ないんじゃないかと思うほどの血みどろシーンがさく裂します。(ってかホースで撒いた感じ)
でもね、コラリー・ファルジャ監督と、主演のデミさんは、途中からだいぶ面白がっていたんじゃないかと思いますよ。
とくに、スーが瞬く間にスターになって、テレビでぶりっ子しながらインタビューに答えていたとき。その様子にムカムカきていたエリザベスが、キッチンを汚しまくりながらフランス料理をつくっていたんですが――電動ハンドミキサーで卵を溶いているとき、ボサボサ白髪頭かつ年齢以上に老いてしまった顔や体に、あえて飛び散るようにするんですよ。笑
そのシーン、思わず吹き出すので飲食しながらの鑑賞にはご注意を。
● どんな角度から見てもスタイリッシュな作品
そして、とにかくですね、いちいちアングルと切り替え、並びがカッコいいんですよ。インテリアも。
まず冒頭では、上からのアングルでエリザベスのウォーク・オブ・フェイム(スターの名が刻まれた星形プレート)が製造過程から映し出され、年月を経て劣化していくところが描かれます。主人公の老いと人々の関心度の移り変わりをうまく象徴するシーンでした。
ちなみに最後のシーンでは、その星形プレートの上でいっときだけ幸せな幻想を見たエリザベス自身が、肉の塊になって(顔だけついていたのでタコ状態😅)→ついには溶けてなくなります😱。
また―― 背中が大きく空いた “患者衣” を着た病院でのエリザベスと、同じく背中が大きく空いた “ドレス” を着たバーでのエリザベスと、“分身生成” 時に割ける背中は、その似たディテールを、意図的に並べてみたのだと思います。(たぶん)
スタジオの長い廊下や、トイレの内装は映画『シャイニング』(1980)にソックリでしたしね。
そして、デイヴィッド・リンチ監督風味の影がうまく合わさった電話シーン(赤みがかった暗い照明)、そんな雰囲気の寝床からの→真っ白透明シャワールームの白い世界へのカチッとした切り替え(上からアングル)などなど、もう、書いたらキリがありません。
もう一つだけ加えるとしたら、ホラーシーン以外の “おぞましさ” もピカ一です。
たとえばデニス・クエイドさん演じるテレビプロデューサーのハーヴェイが、エビをくちゃくちゃ、びちゃびちゃデップしながら食べる、「下品で汚い賞」をぶっちぎりで受賞しそうなシーンとか。
荒れたエリザベスの料理シーンには勝てませんけどね。笑
● 禁じ手の果て
1週間ごとの身体の交換ルールを破ったり、二度使ってはいけない薬品を使ったりなど、主にスーが禁じ手を繰り返したために、最後は細胞の変化が止まらなくなってしまいます。
でも、身体にくっついているエリザベスの驚愕したままの顔とか(なんとなく『トータル・リコール』(1990)を思い出した)、元の顔のコピーを貼り付けた姿とか、タコ状態のエリザベスとか、最後までダークな笑いを誘います。
ちなみに、カラダの交換時は、おふたりとも常に裸です。しかし、デミ・ムーアさんも、マーガレット・クアリーさんも、しなやかに鍛えた非常に美しいボディなので、それほどいやらしさはありませんよ。(たぶん)
(ライターgatto)
『サブスタンス』(2024)
監督:コラリー・ファルジャ
出演者:デミ・ムーア , マーガレット・クアリー , デニス・クエイド


