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CINEMAバリQ

【リミット・オヴ・アサシン】
スタントマンから転身した監督と『ジョン・ウィック』製作陣が描く殺し屋イーサン・ホーク

殺し屋に与えられた命は24時間――「リミット・オヴ・アサシン」

【あらすじ】

以前は犯罪組織の殺し屋だったトラヴィスは、大切な人を1年前に失い、義父のフランクと海辺近くで静かに暮らしていた。しかし、親友で同僚のジムから多額の報酬を提示されると断れず、再び組織の仕事をすることに。だが、その任務中に撃たれ、命を落としてしまう。蘇生技術を持つ組織によって、生き返ることができたトラヴィスだったが、情報だけを手に入れたかった組織は、彼をすぐに処分しようとする。それに気づき逃走したトラヴィスは、与えられた命が24時間のみだと知り、自分のすべきことを悟る。

この映画の買い取り価格→→→ 『リミット・オヴ・アサシン

巨大犯罪組織がちっちゃく見える――「リミット・オヴ・アサシン」

【レビュー】

少しマニアックな路線を突っ走るイーサン・ホークさんのアクションを堪能しようと鑑賞したら、出番は少ないけれど、ルトガー・ハウアーさん演じる義父のフランクがとてもナイスでした。

高齢の味わい深い男性と、瞳が美しい雨に濡れた犬みたい(?)なイケメンが、美しい光に包まれた海辺で他愛ないことを話している、とても素敵なシーンから映画は始まります。

しかーし、役者さんの魅力と、物語のキャラクターが合致せず(義父のフランクを除いて)、おまけに巨大犯罪組織も、その親分の所作にも凄みがなく、途中すこ~し眠くなってしまいました。

そもそも、繊細なダメっぽさが母性本能をくすぐるイーサン・ホークさんと、やはり優しくて繊細な兄さん風のポール・アンダーソンさんが、凄腕の殺し屋という設定に無理があるのかも。

ヒゲ面ボサボサ頭の雨に濡れたワンこみたいな2人が、ストリップクラブのバーカウンターでナッツをつまみに飲んでいる姿が一番しっくりきたような。あのシーンだけなら、ほとんど「心に沁みる人間ドラマ」です。

インターポールとして重要な証人を警護する、女性捜査官リンを演じたシュイ・チンさんも、アジア系の上品な顔立ちをしているので、カンフーならいざ知らず、拳銃を手にしたハードなアクションはあまり似合いませんでした。もっと似合わないのは、トラヴィスとのワン・ナイト・ラヴ・アフェアー的な駆け引き。絶対に“そういうこと”をしなさそうな女性に、「無理やり演じさせた感」いっぱいです。

いちばんしっくりきたのは、彼女が我が子を抱きしめるシーンだったかも。つまり、やはりシュイ・チンさんも人間ドラマ向き?

というわけで、心に沁みる人間ドラマ的な雰囲気をもつ役者さんたちが、南アフリカ・ケープタウンで、少しマニアックなサスペンス・SF・アクションを展開していきます。命のタイムリミットを示す部分は『TIME/タイム(2011)』のようであり、蘇生の部分においては何となく『プリデスティネーション(2014)』や『オープン・ユア・アイズ(1997)』を思いださせます。

なぜか人質がいてもガンガン撃ってくるし(人質をとっている意味がない)、本領を発揮する前のトラヴィスはダメすぎるし、ジムの部下もダメすぎて「カメラは回収したがメモリなんて知らないもん」とか子供みたいなことをいうし、巨大組織が柔すぎるし、「だるまさんが転んだ」でもやっているのかと思うほど、トラヴィスに攻め込まれた悪玉親分が、長らく立ったまま動かず、闘おうとも逃げようともしないという、ツッコミどころも満載です。

しかし、義父フランクはスカッとさせてくれるし、トラヴィスが本領を発揮した際の華麗なアクションシーンは、スタントマンから転身したという、ブライアン・スムルツさんが監督を務めているだけに、見ごたえがありました。

【登場人物と出演者】

凄腕の殺し屋であるトラヴィスは、映画のなかのセリフにもあるように、「悪い人」ではありません。心もカラダもボロボロになりながら、「正しいこと」を選択しようとします。っていうか、そもそも何で殺し屋になったのさ? 

演じるのは、ダメ男をやらせたら天下一品とか、セクシーすぎるダメ男とか、イケメンすぎるダメ男とか、なぜかことごとく“ダメ男”呼ばわりなのにモテモテのイーサン・ホークさん。実際には、俳優、脚本、監督、舞台演出、小説までも手掛ける優秀な方なんですけどね。そのギャップも、多くの人に愛されている部分なのかもしれません。

女性捜査官リンは、愛する息子と母が香港に住む、インターポールの凄腕捜査官。トラヴィスが多額の報酬を提示され断れなかった仕事の、ターゲットを守る任務についています。演じたのは、シュイ・チンさん。『LOOPER/ルーパー(2012)』では、オールド・ジョーの妻を演じていました。

トラヴィスの親友で同僚のジムは、トラヴィスと同じく犯罪組織の殺し屋。ずいぶん立派なオフィスを与えられていたので、幹部なのかもしれません。でも最初のシーンに出てきたビックリするほどマヌケな2人組を、「俺の部下で一番優秀なんだ」といっていたので、かなり不安。

そのジムを演じたのはポール・アンダーソンさん。『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム(2011)』では、モリアーティ教授の手下で狙撃手のモラン大佐を演じています。今回の作品でも、狙撃シーンだけは凄腕の殺し屋に見えたかも。

トラヴィスの義父フランクは、トラヴィスが唯一心を許す、本当の父親のような存在。演じたのは、リドリー・スコット監督のSF映画『ブレードランナー(1982)』で、レプリカントを演じたルトガー・ハウアーさん。

【結論】

スタントマン出身のブライアン・スムルツ監督と、『ジョン・ウィック』シリーズの製作で知られるベイジル・イヴァニク氏らが、繊細なダメ男(実際には違う)イケメンと、『ブレードランナー』のレプリカントを義理の父子に、やたら繊細で優しそうな2人を凄腕の殺し屋にして、

凄腕なのか凄腕じゃないのか分かりにくい一匹狼と、巨大なのか小さいのか分からない組織とのマニアックな戦いを、家族愛と友情の、“端っこ”で描いた、アクションはプロ仕様の映画です。

ロケットランチャーも、「なぜそこで飛ばす」というところでスッ飛びます!

ライター中山陽子でした。

 

リミット・オヴ・アサシン(2017)

監督 ブライアン・スムルツ
出演者 イーサン・ホーク/シュイ・チン/ポール・アンダーソン/ルトガー・ハウアー

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