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CINEMAバリQ

【ビッグ・リボウスキ】
なんじゃこりゃ? から病みつきに。カルト的人気を誇るコーエン兄弟のコメディ映画

無職で無精者で許容力が絶大な男の災難――「ビッグ・リボウスキ」

【あらすじ】

湾岸戦争のころのロサンゼルス。毎日のようにマリファナを吸い、カクテルを飲み、仲間とボーリングに興じる無職のジェフリー・リボウスキこと“デュード”は、ある日、同姓同名の金持ちと間違えられ、闖入してきた暴漢たちに大切な敷物を汚されてしまう。そこでデュードは金持ちのビッグ・リボウスキのもとを訪れ、敷物の弁償を求めたが、邪険に扱われうえに弁償もなく追い返されてしまう。だが、ビッグ・リボウスキの忠実な秘書であるブラントにウソの伝言を告げ、まんまと立派な敷物を屋敷から持ち帰るが……。

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よく噛まなければ味が出ない映画――「ビッグ・リボウスキ」

【レビュー】

正直なところ、初めて観終わったあとは「なんじゃこりゃ」でした。とはいえ、それでも不可抗力で吹き出したのは2回。デュードがある人物のメモ内容を探った際の思わぬ結果と、デュードが風向きのせいで粉まみれになってしまうところ。また、ジンワリ笑ったのは数回。迷惑な友人をボロクソに貶し、絶縁状を叩きつけた数秒後、「あ、ボウリングの練習は行くから」と、普通に言っていたところです。

そして、猛烈にアホアホな連中と、ゴチャゴチャ感にイライラしていたにもかかわらず、最後はどういうわけか、力強く安心で、安全な感覚に落ち着きました。デュードの絶大な耐性と許容があってこそ生まれた感覚だとは思いますが。

コーエン兄弟は、多くの要素が絡み合うこの作品の特徴について、レイモンド・チャンドラーの小説に似せたと語っています。今でこそ多く見られる手法ですが、1998年には画期的すぎたのかもしれません。公開当時はかなり不評だったといいます。

しかし、その数年後にどんどん口コミで広がり、カルト的人気が大爆発したとのこと。コーエン兄弟の崇拝者は多いので、今もこの映画には熱狂的なファンがいるようです。

【登場人物と出演者】

ジェフ・ブリッジスさん演じるジェフリー・“デュード”・リボウスキは、自他共に認める街一番の不精者。しかし、人好きのする男で、ボウリング大会の練習も欠かしません。いつもヨレヨレの格好で、大好きなカクテル「ホワイトルシアン」を常に飲んでおり、おおかたマリファナでラリっています。

この時点でまったく共感できないキャラクターですが、自分がどうしたらハッピーになれるかよく知っていて、ホワイトルシアンでヒゲを汚す以外はあまり不快感がなく、他者と、ありのままの自分を受け入れる心の広さにいたっては、尊敬の念さえ抱いてしまいます。以前は反戦活動に参加していたとか、メタリカのマネージャーについていたとかなんとか。このキャラクターは、監督らの知人がモデルなのだそうです。

ジョン・グッドマンさん演じるウォルター・ソブチャックは、キレやすくて迷惑千万な、相当にヤバいやつです。『ハングオーバー! 』シリーズのアラン(ザック・ガリフィアナキスさん)的といったところでしょうか。常に拳銃を持ち歩くベトナム戦争退役軍人で、防犯ショップの経営者で、厳格なユダヤ教徒です(ユダヤ人ではありません)。

なぜか消極的な友人(ドニー)が発言する機会を一切与えないし、おおらかなデュードをイラつかせるほど面倒くさい男ですが……、やり方は間違っていても、友人思いであることは間違いありません(ほぼ迷惑だが)。

コーエン兄弟の前作『ファーゴ(1996)』にも主要な役で出演しているスティーヴ・ブシェミさんが演じた、セオドア・ドナルド・“ドニー”・カラボッソスは(すごい名前)、デュードとウォルターとの3人組のひとりです。何か尋ねようと口を開いても、すぐウォルターに「だまってろ!」と遮られてしまうので、一緒にいても話の内容を理解できていません。よくわからないまま、2人のそばに座って話を聞いているのみ。

それでも仲間を愛し、真面目に穏やかに、ボウリングを楽しんでいる様子が健気です。『ファーゴ(1996)』のカール・ショウォルター役とは、180度違うキャラクターですね。もちろん、仲間もドニーを愛しています。

なお、デュードが間違えられた大富豪 ビッグ・リボウスキの忠実な秘書、ブラントを演じているのはフィリップ・シーモア・ホフマンさん、ビッグ・リボウスキの娘 モードを演じているのはジュリアン・ムーアさん、その友人をデヴィッド・シューリスさんと、演技派も個性的なキャラクターでガッチリと脇を固めています。

ちなみに、『ファーゴ(1996)』にも出演したピーター・ストーメアさんは、妙なニヒリスト(虚無主義)集団のリーダーを演じています。他のキャラクターが濃すぎて、同氏特有のヤバいやつ的な魅力は、いまひとつ発揮されていなかったかも。

一方、出演時間は短くても、かなり強烈な印象を残していたのはジョン・タトゥーロさんです。コーエン兄弟やスパイク・リーさんなど、才能あふれる監督に愛されている俳優さんですね。演じたのは、テカテカでどキツい、全身タイツみたいなユニフォームを着てボウリング大会に命を燃やす、少年愛者で露出狂というゲス野郎 ジーザスです。

なお、ヒゲが特徴的なサム・エリオットさんは、この映画の語り部 ザ・ストレンジャーを演じています。「俺が演じる人物は、いったいどんな存在なんだ?」とエリオット氏が監督らに尋ねたほど、映画の中でこの人物に関する説明は一切ありません。登場するのも2回のみ。しかも宇宙人か? というぐらい唐突に。でも、なぜか魅力的な存在なのです。

【結論】

酒は飲むし働かないしハッパは吸うしアホアホな主役は、傲慢で自己中心的で強欲で、乱暴で横暴な連中に翻弄されながらも、なぜか最後は穏やかな日常に戻ることができます。

「デュードは耐え抜く」

何気ないセリフの端々に、人生哲学があります。この映画の根底にあるのは、善行と友情の精神なのだとか!? それを描いたのがコーエン兄弟ですから、とうぜん一筋縄ではいきません。奇妙で可笑しくて、少しだけ温かい世界に、どっぷりと浸かってみてください。

ライター中山陽子でした。

 

ビッグ・リボウスキ(1998)

監督 ジョエル・コーエン
出演者 ジェフ・ブリッジス/ジョン・グッドマン/スティーヴ・ブシェミ/ジュリアン・ムーア

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