【ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋】
格差カップルというより器のデカさが銀河系レベルな2人のラブストーリー
初恋のお姉さんは次期大統領候補とか「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」
【あらすじ】
下ネタ満載「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」
【レビュー】
ロング・ショット(Long Shot)という言葉は、「期待薄」「勝つ見込みの低い参加者」「大穴」といった意味を持つそうです。この映画の“期待薄”とは、才色兼備な次期大統領候補とダメダメ男の恋が期待薄とか、大統領選挙直前の大スキャンダルで当選が期待薄とか。
でも、そんなことより何よりも、注目すべきは主役の2人の「器」が銀河系レベルに大きいことです。 なんせ、今回の作品ですっぱ抜かれたスキャンダルは「恥ずかしさ」が最上級レベルですから。
しかし、2人はコッパズカシイことなんぞ脇に置き、自分と愛する人の信念が脅かされること、それにより絆が揺らぐことばかりを憂慮します。「みんなやるでしょ」と突き刺すような目で語るシャーロット役のシャーリーズ・セロンがカッコいいのなんのって。何度も観なおしましたわ(「イエイ、そうさ!」と返すラッパーもナーイス)。
普通ならそんなことが起ころうものなら、お互い責め合いケンカして、弁護士立てて泥沼になり、気分の悪い状態に陥りそうなもの。ところが、この映画ではそういったドロドロは一切ありません。『ベイウォッチ(2017)』ばりに終始下ネタが満載なのに、思わず涙が出そうになりましたよ。
メガホンを取ったのは、『50/50 フィフティ・フィフティ』のジョナサン・レヴィンさん。 本当に、新鮮で感動的な下ネタコメディでした――じゃなくて、ナイスなラブストーリでした。
【登場人物と出演者】
シャーリーズ・セロンさん演じる次期大統領候補のシャーロット・フィールド国務長官は、美貌と知性とナイスバディと「少女」を備えた善良で優しい超理想的な女性。しかも強い。あまりにも完璧なので近寄る勇気を出せるのは、ちょっと変わったセレブ(本当の笑顔は怖いカナダ首相)かフレッドぐらいかも。
セス・ローゲンさん演じるジャーナリストのフレッド・フラスキーは、頭が切れて才能があり、しかも正直で誠実なのに、やることなすことぜんぶ滅茶苦茶。それをはた目には「ダメ男」というのかもしれませんが、こんなふうに思い、守り、尊重してくれる男性がいたら女性は幸せだと思う。
オシェア・ジャクソン・Jrさん演じるランスはフレッドの大親友。起業家としてかなり成功しているのに、ダメダメな状況の親友をとても大切にするし、胸の前で腕をクロスさせて「ワカンダフォーエバー」と言うし、もう涙が出るほど友達にしたいナンバー1。異なる政治観、宗教観を語り合える友なんてそうそういない。
アンディ・サーキスさん演じるメディア王のパーカー・ウェンブリーは、あくどい金をたんまり持ったアホでバカなマヌケです。以上(サーキスさんの演技は最高です)。
【結論】
格差カップルのありえないラブ・ストーリーや下ネタばかりが注目されがちな作品だけど、この映画の最大のポイントは「2人の人間力のすごさ」です。チャドウィック・ボーズマンさんを想いながら……「ワカンダフォーエバー!」
ライター中山陽子でした。
ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(2019)
監督 ジョナサン・レヴィン
出演者 シャーリーズ・セロン/セス・ローゲン/オシェア・ジャクソン・Jr/アンディ・サーキス