【タイガー・バレット】
インドのド派手な肉弾アクション・スリラー映画
元恋人からの意外な頼み事とは――「タイガー・バレット」
【あらすじ】
インド陸軍に所属するロニー少佐は、大学時代の元恋人ネーハーから久々に連絡をもらい戸惑っていた。結婚寸前だったにもかかわらず突如別離し、それからというもの全く連絡がなかったからだ。久しぶりに再会した彼女は、既に一児の母だった。ところが、その最愛の娘がさらわれてしまったという。だが、彼女の周辺ではその子供の存在が知られておらず……。
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足を踏み出すと風が起こる男――「タイガー・バレット」
【レビュー】
CGかと思うような筋肉を持つ、なぜか歩き出すと風が吹く男が主役のアクションムービーです。シリアスで悲しい部分もありますが、それ以外は相変わらず「ワケわからんが面白い」インド映画でした。
サスペンス要素もある、ハードでワイルドなアクション映画を真剣に楽しもうとすると、きっと「お前らふざけてんのか」と腹が立つので、筆者のように突っ込む気満々で観るのがおすすめです。
ちなみにこの作品、2016年公開のロマンチック・スリラー『Baaghi』の続編とか。でも、どうやら主役の名前と、それを演じている役者さんが同じというだけで、内容はまったく関係なし。「内容がつながっていなくても、別にいいじゃねえか。『続編』といえば続編になるんだから、とりあえずやっとけ」を、ここまで大胆に潔く大枚をはたいて製作するボリウッドには感服するばかり。
おかげで、楽しい時間を過ごせました。
ちなみに、1作目も2作目もリメイクなのだそう。使われている言語も違います。なんにせよ、もとになった映画や1作目を観ていなくても、主役を演じたタイガー・シュロフさんが冗談みたいにムキムキだし、スーパーヒーロー並みのパワーで悪党をぶちのめすし、ジャンプの高さも飛距離もすごいし、踊りが異常なまでにキレッキレだし、拷問には(ほぼコントに見えるくらい)ビクともしないので、十分に楽しめます。
そして、「限度を知らないインド映画」という位置づけを、さらに確かなものにしてくれた映画のひとつだといえるでしょう。
【登場人物と出演者】
インド陸軍で上司から寵愛を受ける(変な意味ではない)ロニー少佐は、掟破りだが、常に正義を貫き結果を出す男。で、ムキムキ。元カノからの連絡で動揺しますが、まさか、こんなにハードボイルドな男が「ラブラブで踊らないようね~」と思ったら、回想時にはやはり踊っていました。
演じるのは、タイガー・シュロフさん。振り向きざまにガンを飛ばす際、「ジトー」っと見る目が、ちょっぴり吉田戦車さんの漫画『伝染るんです。』の、かわうそ君に似ていたような気が。
大学時代の元恋人ネーハーの存在は、この映画を切なくする最大の要因。演じるのは、繊細ではかない雰囲気が見え隠れするスレンダーな美女ディシャ・パタニさん。笑顔がとってもキュートです。インドの女優さんは、本当に美しい人が多い。
アジャイ・シェルギルは、警察のお偉いさん。度量の大きい、理解がある人物として、ロニー少佐に接しますが……。ちなみに、ロニー少佐の上司とはお友達の模様。 演じるのは、マノージュ・バージパーイーさん。
そのお偉いさんがいる本署に訪れて、事件の捜査に参加するのは、破天荒かつ適当そうな印象で相手の目をくらまし、実際には鋭い視点で真実を見抜くすご腕(?)刑事ロハ・シン・ドゥル。演じたのは、ランディープ・フーダーさん。最初はキャラクターづくりの失敗かと思いましたが、『君よ憤怒の河を渉れ(1974)』の 矢村警部(原田芳雄さん)を思わせるような存在で、なかなか良かったです。
【結論】
ランボーと、ブルース・リー師匠、ジャン=クロード・ヴァン・ダムさん的アクションと、ちょっぴりヒッチコックの『ガス燈(1944)』と『少林サッカー( 2001)』が入り混じった、インドの肉肉弾弾なアクション・スリラー映画です。真面目に観ないでお楽しみください。
ライター中山陽子でした。
タイガー・バレット(2018)
監督 アフメド・カーン
出演者 タイガー・シュロフ/ディシャ・パタニ/マノージュ・バージパーイー/ランディープ・フーダー